AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「流体吐出管構造体」とする特許権(本件特許権)を有する原告が、被告の製造・販売する加工液改良装置ないし加工液せん断装置(被告各製品、サイズ違いの5種類)が本件特許の請求項1および請求項3に係る各発明(本件各発明)の技術的範囲に属すると主張し、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金7425万円および遅延損害金の支払を求めた事案である。 本件特許は、工作機械の刃物と工作物との接触箇所にクーラント液(冷却水)等を供給する際に、螺旋羽根本体および「フリップフロップ現象発生用軸体」を通過させることで強烈な竜巻流や乱流、無数の微小な渦を発生させ、冷却性能を向上させることを技術的特徴とするものである。被告は、かつて原告から仕入れて販売していた加工液改良装置を、平成28年以降は自ら製造販売するようになった。 【争点】 主たる争点は、被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか否かであり、その中でも特に、被告各製品の「第2の軸体8」が構成要件EおよびFにいう「フリップフロップ現象発生用軸体」に該当するかが最大の争点となった。原告は、「フリップフロップ現象」とは「クーラント液等が乱流となり無数の微小な渦を発生させる現象」を意味し、被告製品のパンフレットや被告の特許公報にフリップフロップ現象の利用が記載されていることから、被告製品がこれを発生させると主張した。これに対し被告は、「フリップフロップ現象」とは渦の発生と流体の流れる方向の周期的な交互の方向変換の両方を意味するものであり、被告各製品はこれを発生させないと反論した。 【判旨】 請求棄却。 裁判所は、本件明細書の記載を踏まえ、「フリップフロップ現象」とは、単に乱流や微小な渦の発生にとどまらず、流体の流れる方向が周期的に交互に方向変換する現象を含むものと解すべきであると判断した。その上で、被告が実施した実験(透明プラスチック製の筒本体を用いてクーラント液を通過させる検証実験)において、16分22秒の観察にわたり被告製品の「第2の軸体8」の凸部間の交差流路でフリップフロップ現象の発生が観察されなかったとの証拠に高い信用性を認めた。被告各製品のパンフレットや被告の特許公報にフリップフロップ現象の利用が記載されていることについては、記載があるからといって真実そのような性能を有するとは限らず、また被告各製品が当該特許の実施品であると認めるに足りる証拠もないとして、原告の主張を退けた。 したがって、被告各製品の「第2の軸体8」は「フリップフロップ現象発生用軸体」に当たらず、被告各製品の構成は本件発明1の構成要件E・Fを充足せず、本件発明3の構成要件Mも充足しないから、被告各製品は本件各発明の技術的範囲に属しないと結論付け、その他の争点(無効理由の存否、損害額等)を判断するまでもなく、原告の請求を棄却した。