国家賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 宗教団体「ひかりの輪」(原告)が、国(被告)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(合計7円)及び同法4条・民法723条に基づく謝罪広告を求めた事案である。原告は、オウム真理教を脱退した構成員らが平成19年に設立した団体であり、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法)に基づく公安調査庁長官の観察処分の対象団体の内部組織であるとされていた。 原告は、①公安調査庁の公安調査官らが、原告の構成員がサリン事件を正当化する発言をした旨や、原告の構成員がA(松本智津夫元死刑囚)に対する帰依心を保持している旨を記載した調査書を作成し、公安調査庁長官がこれらを添付して平成23年の第4回観察処分更新請求を行ったこと、②公安審査委員会が同旨の記載をした決定書により更新決定をし、官報公示及び新聞報道されたこと、③平成26年10月に公安調査官がフジテレビの取材に対し、Aと同一視される仏画が原告の祭壇に掲示され構成員がAへの帰依心を保持している旨発言し、これがテレビ報道されたこと、④平成26年12月の第5回更新請求書において、原告が旅行業法に抵触する手法で資金獲得を図り、認知症の高齢者から悪質な手段で寄付金を徴収している旨記載されたこと、以上により名誉を毀損されたと主張した。 【争点】 公安調査庁長官による観察処分更新請求書の記載・調査書添付、公安審査委員会による更新決定、公安調査官の報道機関に対する取材発言が、それぞれ原告の名誉を毀損するものとして国家賠償法1条1項の適用上違法となるか。 【判旨】 請求をいずれも棄却した。 裁判所は、団体規制法が、無差別大量殺人行為を行った団体の活動状況を明らかにし国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とし、更新の理由となる事実が国民生活や治安に直結する極めて影響が大きく緊急性の高い情報であることに鑑み、更新請求書の記載や添付調査書に原告の社会的評価を低下させ得る記載が含まれていたとしても、公安調査庁長官が請求時に把握していた各種情報に基づき更新の理由となる事実の立証として当該記載をするという判断が不合理であるといえる事情がないのであれば、国家賠償法1条1項の適用上違法とはならないとの判断枠組みを示した。 そのうえで、原告の構成員の「サリン事件ですら正しい」等の発言や、Gの「グルと弟子の関係」「魂の絆」等の発言内容、原告代表者の説法内容その他公安調査庁が把握していた情報に照らし、原告の構成員らがサリン事件を正当化する発言をしている、Aに対する帰依心を保持しているとみて、これらを更新の理由となる事実の立証として調査書や更新請求書に記載したという判断が不合理であるとはいえないと判示した。公安審査委員会による更新決定についても、同様に不合理とはいえないとした。 公安調査官による取材発言については、法令上直接の根拠のない公表行為であるから、目的の正当性、公表の内容・方法・必要性・緊急性に照らし、確保すべき利益と原告の不利益を比較考量して相当であるといえる場合に違法とならないとの枠組みを示し、団体規制法に基づく観察処分対象団体の活動状況という公益性・緊急性の高い情報であり、公表内容も不合理とはいえないとして、違法性を否定した。 第5回更新請求書の旅行業法違反に係る記載については、原告の聖地巡り等が有償で参加者を一般募集したもので旅行業に当たり刑罰対象となる可能性があると判断されてもやむを得ず、実際に原告副代表が検察官送致された事実もあることから不合理とはいえないとし、認知症高齢者からの寄付金徴収に係る記載についても、原告が高齢者構成員の年金受取口座を管理し寄付金名目で金員を受け取っていた事実に照らし不合理とはいえないとした。