著作権に基づく差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、学習塾を運営する控訴人(株式会社日本入試センター)が、中学入試の模擬試験問題と「解答と解説」を作成した後、別の学習塾を運営する被控訴人(株式会社受験ドクター)が、その試験問題を題材として独自の解説動画(被告ライブ解説)をインターネット上で配信したことについて、著作権侵害を主張した事案である。控訴人は、被告ライブ解説が本件問題及び本件解説を複製して利用したことにより複製権を侵害し、また被告ライブ解説は本件問題及び本件解説の翻案であるから翻案権を侵害するとして、著作権法112条1項に基づく動画配信の差止め及びその予防並びに同法114条2項に基づく損害賠償の一部請求として1500万円及び遅延損害金の支払を求めた。原審の東京地裁は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴したものである。 【争点】 主たる争点は、被告ライブ解説が本件問題又は本件解説の複製ないし翻案に当たるかである。控訴人は、被告ライブ解説が本件問題を画面表示したり読み上げたりしていなくとも、生徒は試験を受けた直後で問題文の記憶が鮮明であり、本件問題・本件解説を手元に置いて視聴していることを総合考慮すべきであると主張し、また本件問題が編集著作物であり、本件解説も作問者の工夫が表れたものであるから、両者の表現上の本質的特徴を直接感得できる旨主張した。 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却した。まず複製については、被控訴人の手によって有形的な再製が行われていない以上、生徒が問題や解説を手元に置いていたとしても複製があったとは認められないとした。次に翻案については、最高裁平成13年6月28日判決(江差追分事件)を引用し、翻案の意義は編集著作物にも同様に解されるとした上で、本件問題の本質的特徴は題材となる作品や設問の選択・配列等にあるのに対し、被告ライブ解説は問題を所与として回答者の思考過程や思想内容を表現する言語の著作物であり、両者は本質的特徴を異にすると判断した。したがって、被告ライブ解説が本件問題の配列・順序に従って解説しているとしても、それは問題を再現ないし変形しているのではなく、翻案には当たらないとした。さらに本件解説との関係でも、読解対象文章や設問を前提としていることは表現にわたらない内容の同一性をもたらすにすぎず、文言等の共通性を通じて判断されるべき表現の本質的特徴の同一性は認められないとして、控訴人の主張をいずれも退けた。