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【事案の概要】 原告(有限会社デッキ)は、ハンディーマッシャー(押し潰し器)等に装着して食品を棒状に押し出すための「押出し食品用の口金」について意匠登録出願をした。本願意匠は、薄い円形板に、角部に面取りを施した五つの凸部からなる星形の抜き穴を、各抜き穴の中心を結んだ線のなす角度が六〇度となる千鳥状の配置(いわゆる六〇度千鳥)で一九個形成したものである。 特許庁は、本願意匠は出願前に公然知られた形状の結合に基づき当業者が容易に創作することができたものであるとして拒絶査定をし、原告の拒絶査定不服審判請求についても成り立たないとする審決をした。原告は、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 本願意匠が、意匠法三条二項にいう「日本国内又は外国において公然知られた形状等の結合に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができた」ものに当たるかが争点となった。原告は、抜き穴のサイズ・数・配置の選択に加え、周縁に設けられた蒲鉾状の余白部分と円形板の円形とが生み出す独特の美感に着想の新しさないし独創性があると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所第四部は、原告の請求を棄却した。 裁判所は、最高裁昭和四九年三月一九日判決等を引用し、意匠法三条二項は、公然知られた抽象的モチーフを基準として当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるか否かを問題とする規定であり、美感の有無を判断するものではないとの解釈を前提とした。 その上で、本願の出願当時、押出し食品用の口金の分野において、角部に面取りを施した五つ又は六つの凸部からなる星形の抜き穴の形状が公然知られていたこと(意匠一・二)、板状の金属材料にデザイン性を持たせるため六〇度千鳥の配置で複数個の抜き孔を設けることは当業者にとってありふれた手法であったこと、一九個の抜き穴を千鳥状に配置する形状も公然知られていたこと(意匠三)を認定した。これらを前提にすれば、本願意匠は、公然知られた星形の抜き穴を、ありふれた六〇度千鳥の手法で一九個形成したにすぎず、創作に着想の新しさや独創性は認められないとした。 また、周縁の余白部分については、調理器具の環状縁部に当接する部分には抜き穴を形成できないため余白が生じることは当業者が当然想定すべき事項であり、抜き穴の大きさやピッチに応じて余白の大きさは一定範囲に収まること、六〇度千鳥で一九個配置すれば外側の抜き穴の先端を結ぶ図形が正六角形となり、その外周との間に蒲鉾状の余白が生じることも自明であるから、余白部分の形状にも独創性は認められないとした。 結論として、本願意匠は出願前に公然知られた形状の結合に基づき当業者が容易に創作できたものであり、これと同旨の本件審決に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。