正社員の地位確認等、損害賠償反訴、雇用関係不存在確認請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 語学スクール運営会社に勤務し育児休業を取得していた女性コーチ(一審原告)が、育児休業終了に際し、保育園が確保できないことから週5日勤務の正社員ではなく週3日4時間勤務の契約社員として復職する旨の合意(本件合意)を締結した。その後、一審原告は正社員への復帰を求めたが応じられず、会社側は契約期間満了により雇止めをした。一審原告は、本件合意は育児休業を理由とする不利益取扱いに当たり無効であり、正社員としての地位が存続している、仮に無効でないとしても雇止めは違法であるなどと主張して、地位確認、未払賃金、マタニティハラスメントを理由とする慰謝料等を請求した。他方、一審被告(会社)は、一審原告が本訴提起と同日に行った記者会見(本件記者会見)で会社名を公表した上で事実に反する発言をし、信用を毀損されたと主張して慰謝料を反訴請求した。一審は原告勝訴部分を一定程度認めたため双方が控訴した。 【争点】 本件合意が正社員契約を解約する趣旨か、均等法9条3項・育介法10条・23条、労契法12条に反し又は錯誤等により無効か、契約社員契約の雇止めに客観的合理的理由・社会通念上の相当性があるか、会社側の一連の対応が不法行為に当たるか、記者会見での各発言が会社の名誉・信用を毀損する不法行為に当たるか、が争点となった。 【判旨】 東京高裁は、本件合意について、正社員と契約社員は雇用形態として明確に区別されており、一審原告は雇用契約書上「期間の定めあり」「契約社員」を選択しているから、正社員契約を解約し新たに有期労働契約を締結する合意と認められるとした。その上で、一審原告は保育園が確保できず家族の支援も得られない状況で週5日勤務が困難であったところ、一審被告から育休明けの多様な雇用形態について約6か月の検討期間を与えられ、自らの意思で週3日4時間勤務の契約社員を選択したものであるから、本件合意には自由な意思に基づく合理的理由が客観的に存在し(最高裁平成28年2月19日判決の枠組み)、均等法・育介法の「不利益な取扱い」には当たらず、錯誤もないと判断した。一方、契約社員制度が育休明け社員のみを対象とし将来の正社員再契約を想定していることから、労契法19条2号該当性は認めたものの、一審原告が執務室内で秘密録音を繰り返し、誓約書を撤回するなど服務規律に反する行為を続けたこと、マスコミに対し「正社員から契約社員への変更を迫られた」「保育園が決まったのに正社員に戻すことを渋られた」などの事実と異なる情報を提供し会社の信用を毀損するおそれがある行為に及んだこと、業務用メールを私的に利用し職務専念義務に違反したことなどを総合すれば、雇止めには客観的合理的理由と社会通念上の相当性があるとして雇止めを有効とした。不法行為については、会社が社外関係者に対し一審原告が就業規則違反と情報漏洩で自宅待機処分となった旨を伝えた点のみプライバシー侵害として違法性を認め慰謝料5万円等の限度で認容し、その余の請求はすべて棄却した。他方、記者会見における発言のうち、「正社員から契約社員になることを迫られた」「人格を否定された」「組合加入により危険人物と言われた」との各発言は、真実性・真実相当性が認められず、一審被告の社会的評価を低下させるものとして反訴請求を慰謝料50万円及び弁護士費用5万円の限度で認容した。