AI概要
【事案の概要】 一般貨物自動車運送業を営む株式会社である原告は、「償却制社員」と呼ばれる運転手らに対し、各月の運送業務の出来高に応じて月末に金員(本件各金員)を支払っていた。原告はこの本件各金員について、所得税法28条1項にいう「給与等」に該当しないことを前提に、消費税・地方消費税の確定申告において課税仕入れに係る支払対価として計上するとともに、源泉所得税等を徴収しなかった。 これに対し札幌α税務署長は、本件各金員は給与等に該当するとして、平成24年3月から平成26年3月までの各課税期間について消費税等の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を行い、平成22年5月から平成26年9月までの源泉所得税等につき納税告知処分および不納付加算税の賦課決定処分を行った。原告はこれらの処分の取消しを求めて提訴した。 【争点】 第一に、本件各金員が所得税法28条1項にいう給与等に該当するか否か。第二に、本件各処分が信義則に反するか否かである。 原告は、運転手らは原告から独立して運送事業を行う個人事業主であり、本件各金員は請負の対価にすぎないと主張した。また、平成4年頃の税務調査で担当者から「償却制社員は自ら確定申告するよう指導を受けた」として、本件各処分は公的見解表示に反し信義則違反であると主張した。 【判旨】 札幌地方裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 給与所得該当性の判断枠組みとして、最高裁昭和56年4月24日判決を引用し、空間的・時間的拘束、継続的な労務提供、指揮命令への服従、用具等の提供、危険負担・費用負担の所在などの要素を総合的に判断すべきとした。 本件では、原告が運転手に運行指示書・発注書を交付し、点呼を実施し、乗務日報やタコグラフのチャート紙を提出させて雇用契約社員と同等の管理を行っていたこと、運転手らが貨物自動車運送事業の許可を有しないため原告を離れて自由に貨物運送を行えない立場にあり、実態としても原告の業務のみに従事していたこと、Bを除く運転手の使用車両は原告名義で購入・リースされ事業用ナンバーも原告が取得していたこと、事故発生時には原告が一括加入する保険で対応していたことなどを総合し、運転手らは原告の指揮命令に服して労務を提供していたと認定。本件各金員は給与等に該当するとした。 運転手らが車両償却費を控除される形で車両購入代金を負担していた点についても、所有権は代金完済まで留保され、完済後も名義移転されていなかったことから、実質的所有者は原告であると判断。また、貨物自動車運送事業法の許可を得ない形態が黙認されていたとの主張も排斥した。 信義則違反の主張についても、信頼の対象となる公的見解の表示といえるためには税務署長その他の責任ある立場の者による正式の見解表示を要するところ、調査担当者の発言は一担当者の見解ないし処理方針を示すにすぎず、またそもそも当該発言があったと認めるに足りる証拠もないとして排斥した。