AI概要
【事案の概要】 本件は、ラジオコントロール式模型玩具用の小型サーボモーター等を製造販売する原告が、オンライン通販で玩具等を扱う個人事業主である被告に対し、商標権侵害および不正競争防止法違反を理由として、商品の販売差止め、廃棄、ウェブページの削除および損害賠償を求めた事案である。 原告は「TOWER PRO」の商標権(第28類「おもちゃ類」等を指定商品とする登録商標)を有し、同商標を付したサーボモーター(MG996R、MG995等の型番)を販売していた。被告は「プラスマジック」の屋号でヤフーショッピング内に出店し、同型番のサーボモーターを販売のために展示していたが、被告ウェブサイト上の画像には原告商標と同一類似の文字列は表示されていなかった。 原告が被告ウェブサイトから被告商品を注文したところ、被告は別の通販サイトで中国の仕入先業者(Fungwan TECH RC Store)に対して納入先を原告として発注し、同業者から国際郵便で直接原告に商品が届けられた。そして到着した現物には原告商標と同一類似の標章が付されていた。いわゆるドロップシッピング形態の取引をめぐり、標章を付した商品の送付行為を販売者である被告の行為と評価できるかが問題となった事案である。 【争点】 主たる争点は、被告商品への標章付与行為を被告の行為として帰責できるか(商標権侵害行為の有無)、および原告の商品表示が不正競争防止法2条1項1号の周知商品等表示に当たり、被告標章と類似して混同のおそれを生じさせるかである。 【判旨】 東京地裁は原告の請求をいずれも棄却した。まず商標権侵害については、被告ウェブサイトでは原告商標と同一類似の文字列は使用されておらず、被告は仕入先業者の通販サイトでも原告商標を含まない表示の商品を発注したにすぎないと認定した。その上で、仕入先業者から購入者に商品が直送される形態において、商品に標章を付す行為自体に着目するときは、特段の事情がない限り当該行為は被告ではなく仕入先業者の行為と評価すべきであり、本件では被告と仕入先業者との間に通常の取引関係を超えた緊密な関係や、被告が発送商品の現物を認識すべき状況があったとは認められないとして、標章付与行為を被告に帰責できないと判断した。売買契約の表示上の当事者が被告であっても、この結論は左右されないとした。 不正競争防止法の主張についても、原告サーボモーターの形態に特別顕著性は認められず、またラベル等の表示についても周知性を基礎づける客観的証拠が乏しいとして周知商品等表示該当性を否定した。さらに念のための判断として、ラベルの1行目が大きく異なることなどを指摘し、取引の実情を踏まえれば原告表示と被告表示は全体として類似せず混同のおそれもないとした。 本判決は、ドロップシッピング取引における商標権侵害の主体性について、販売契約の当事者性と標章付与行為の実行主体性を区別し、後者については直送関係の実態に応じて仕入先業者の行為と評価し得ることを明示した点で、越境ECが拡大する実務に重要な示唆を与える事例である。