都道府県を選択して、裁判官を探すことができます

全国 2522 人の裁判官3141 件の口コミ
知財

不当利得返還請求事件

判決データ

事件番号
平成30ワ18573
事件名
不当利得返還請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2019年12月4日

AI概要

【事案の概要】 原告は、「アンテナカップリングによるデジタル信号伝送方法」という発明の名称を持つ特許(本件特許)の権利者である。本件特許は、ボーリング孔に埋設して長期間使用する歪計や傾斜計から、地表の受信装置へデジタルデータを伝送する方法に関するもので、地中に埋設したアンテナ部分に信号線を直接接続せず、測定装置内部で「2~3cmの距離」でカップリングさせたアンテナを介して同軸ケーブルで電波を送出することにより、落雷による誘導電圧から内部の電子回路を保護し、測定装置の再設置費用を減らすことを目的とする技術である。 被告は磁気応用機器の開発・製造・販売を業とする株式会社で、地震観測のためのデジタル式地殻活動総合観測装置(本件各観測装置、合計19台)の製造に関与し、同装置には無線ユニットが組み込まれていた。原告は、この無線ユニットが本件特許発明の技術的範囲に属する信号伝送方法を実施しているとして、直接侵害に加え、仮に直接侵害に当たらないとしても被告が観測装置を製造・販売する行為は特許法101条4号・5号の間接侵害に当たると主張し、民法703条・704条前段に基づき不当利得金及び法定利息合計約4163万円のうち内金100万円と遅延損害金の支払を求めた。 被告は、無線ユニット内のトロイダルトランスは「アンテナ」ではなく、また2本の導線(コイル)はほぼ接しており「2~3cmの距離」にはないこと、落雷保護は別途実装された雷防止用アレスタが担っていること、観測装置全体を製造したのは菊川観測装置のみで他は部品納入にとどまることなどを主張し、さらに一部については消滅時効を援用した。 【争点】 本件の中核的な争点は、被告の実施するデジタル信号伝送方法(イ号方法)が本件特許発明の構成要件を充足するか、特に構成要件1Cにある「歪計や傾斜計内部において2~3cmの距離でカップリングさせた同軸ケーブルの先端に付けたアンテナを介して」との要件の充足性である。原告はトロイダルトランスのコイルがアンテナに相当し、基板上の同軸ケーブル取付部からアレスタ取付部までの空域が約3cmに達すると主張したのに対し、被告は、カップリングさせるアンテナ間の距離とはトランスを構成する2本の導線間の距離であり、これは2cmよりはるかに短いと反論した。仮に文言侵害が成立しない場合に均等侵害(特に第1要件の非本質的部分該当性、第5要件の意識的除外の有無)が認められるかも争われた。 【判旨】 東京地裁民事第40部は、原告の請求を棄却した。まず文言侵害について、構成要件1Cの「2~3cm」とはカップリングさせたアンテナ同士の距離を指すと解釈したうえで、本件無線ユニットに用いられるトロイダルトランスは2本の導線を束ねて円環に巻き付けた構造であり導線間はほぼ接している状態にあって、トランス自体の長手方向寸法が約12.2mmにとどまることからしても、2本の導線間の距離は2cmに満たないと認定し、構成要件1Cを充足しないと判断した。原告が主張する「無線通信で利用している空域の距離」は構成要件が規定するアンテナ間距離ではないとして退けた。 次に均等侵害についても否定した。本件発明は、落雷からの電子回路保護と測定装置の小型化・十分な電界強度確保という相反する要請を両立させる適切な距離として「2~3cm」を採用した点に技術的本質があり、出願経過でも拒絶理由通知に対し原告自身が、アンテナ部分の空域を小さくしすぎると落雷保護能力が低下するため「2~3cm離すことが最も適した距離」であると意見書で説明して特許査定を得ている。したがってアンテナ間距離は本件各発明の本質的部分であり第1要件を欠き、さらに2cm未満や3cm超の距離は出願経過において意識的に除外されていると評価できるため第5要件も充足しない。以上により均等侵害も成立せず、その余の争点(直接侵害・間接侵害の成否、黙示許諾、消滅時効、損失額)について判断するまでもなく請求は理由がないとされた。本判決は、数値限定クレームの均等論における「意識的除外」判断として、出願経過における意見書の記載が均等の成立を封じる典型例を示したものといえる。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。