被告人aに対する殺人,死体遺棄,被告人bに対する殺人幇助,死体遺棄
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、強迫性障害に罹患していた妻(被害者、当時30歳)を殺害し、その死体を自宅敷地内に埋めて遺棄した夫(被告人a)と、その計画を手助けした夫の母(被告人b)に関する控訴審である。被告人aは、被害者から不条理かつ厳格なルール(外出後の消毒を強要するなど)を課され、長女への暴言等で悩まされていたところ、被害者を殺害して行方不明を装うことを計画した。母である被告人bは、息子から計画を打ち明けられ、死体遺棄の場所として自宅敷地の提供を提案し、穴掘り道具のショベルや消毒用の石灰等を購入、実際に穴掘り作業にも従事した。平成30年3月4日、被告人aは睡眠導入剤入りのカレーを食べさせた上、車内で頸部を絞めて被害者を殺害し、被告人両名で死体を埋めて遺棄した。一審(原審)は、被告人aを懲役15年(求刑17年)、被告人bを殺人幇助と死体遺棄の共謀で懲役7年(求刑6年を超える実刑)に処した。被告人両名が控訴した。 【争点】 (1) 被告人bに殺人幇助罪が成立するか(正犯の実行行為の可能性の認識、および自己の行為の幇助性の認識があったか)、(2) 被告人aの量刑に当たり「介護疲れ類型」の量刑分布を用いるべきか、共依存関係や被害者の言動をどう評価すべきか、(3) 被告人bの量刑において、求刑を超える懲役7年の実刑が相当か、執行猶予を付すべきか、が主たる争点となった。 【判旨(量刑)】 東京高裁は、被告人bについて原判決を破棄し懲役6年に減軽、被告人aの控訴は棄却した。裁判所は、被害者殺害と死体遺棄は行方不明を装う計画上「表裏一体」の関係にあり、被告人bによる自宅敷地の提供提案は別荘地選定が進まない状況を打破する「ブレイクスルー」となったとして、幇助行為が殺害を心理的・物理的に可能にしたと評価し、殺人幇助罪の成立を認めた。被告人aについては、共依存関係の存在やうつ病の精神症状をある程度認めつつも、用意周到で計画性の高い犯行であり、他の選択肢(離婚相談、別病院への入院など)を尽くさず短絡的に殺害に及んだとして、原判決の懲役15年を維持した。他方、被告人bについては、(1)水難事故計画の段階では被告人bは友人に相談し精神科入院を勧めるなど殺害回避を望んでいたとみるのが自然で、「殺害可能性が高いと認識しつつ加担していた」との原判決の加功状況評価は不当、(2)LINEの「ムカムカしてきた」等のメッセージは息子への同情の表現にすぎず、「被害者殺害を容認する個人的動機」を認定した原判決は事実誤認である、と判断。母として息子の依頼に応えたいという心情からの幇助であり、幇助犯として最大級の非難には当たらないとして、求刑通り懲役6年に減じた。なお、執行猶予については、犯行を手助けした程度が極めて大きいとして付さなかった。