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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成31行ケ10026
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年12月11日
裁判官
鶴岡稔彦高橋彩石神有吾

AI概要

【事案の概要】 本件は、特許無効審決の取消しを求める審決取消訴訟である。原告(パスカルエンジニアリング株式会社)は、「流体圧シリンダ及びクランプ装置」に関する特許(特許第6291518号)の特許権者である。この発明は、工作機械のワーク(加工対象物)を固定するクランプ装置に使われる油圧シリンダについて、出力部材(クランプロッド)が上昇限界や下降限界などの所定の位置に達したことを、シリンダ本体内のエア通路の圧力変化を介して検知可能にするものであり、装置の小型化と位置検出の信頼性・耐久性の向上を目的としている。 原告は平成28年の出願後、特許請求の範囲を補正して特許登録を受けたが、被告(株式会社コスメック)は特許無効審判を請求した。特許庁は、本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内でなく新規事項を追加するものであり(特許法17条の2第3項違反)、サポート要件(同法36条6項1号)も満たさないとして、特許を無効とする審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて本訴訟を提起した。 補正の主な内容は、当初の請求項で必須要件とされていた「流体室の流体圧によって弁体を進出状態に保持する流体圧導入室」と「流体圧導入路」に関する構成を削除し、代わりに「弾性部材」によって弁体を付勢する構成を導入するものであった。これにより、補正後の発明には、流体圧による付勢構造を一切設けず、ばねなどの弾性部材のみで弁体を保持する構成までもが含まれることとなった。 【争点】 本件補正により新たに導入された「弾性部材のみで弁体を進出させる開閉弁機構」という構成が、当初明細書等の記載から当業者が導き出せる技術的事項の範囲内のものといえるか(新規事項追加の有無)、及びサポート要件充足の有無である。原告は、当初明細書の実施例2で弾性部材(圧縮コイルスプリング)の使用が開示されていること、「本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の開閉弁機構を採用できる」との記載があること、弾性部材単独構造が周知技術であることから、補正は許容範囲内であると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所第3部は、原告の請求を棄却した。 裁判所は、当初明細書に記載された実施例を詳細に検討し、実施例2における圧縮コイルスプリングは、油圧の立ち上がりまでの過渡期に弁体の作動確実性を高めるための補助的役割にとどまり、弁体を進出状態に保持する主たる付勢力はあくまで油圧導入室からの油圧であると認定した。また、実施例1と同様の効果(信頼性・耐久性の向上、シリンダの小型化)を奏するためには流体圧導入室と流体圧導入路の構成が必須であり、これらは発明の効果と不可分に結び付けられていると判示した。 実施例3ないし8においても、弁体の保持には流体圧導入室・流体圧導入路が必須の構成とされており、流体圧を用いない構成の記載も示唆もない。明細書の「本発明の趣旨を逸脱しない範囲」という一般的記載は、具体的な変更内容を示すものではなく、流体圧を用いない構成を示唆するものとは解釈できない。 したがって、流体圧導入室及び流体圧導入路を備えず弾性部材のみで弁体を保持する構成は、当業者が当初明細書等の記載を総合することにより導き出せる技術的事項とはいえず、本件補正は新たな技術的事項を導入するものとして許されない。新規事項を追加する補正は、それ自体が独立の無効理由となる(特許法123条1項1号)から、サポート要件の判断を待たずに特許は無効とされるべきであるとして、原告の取消事由1を退け、請求を棄却した。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。