殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,有印私文書偽造,同行使,建造物損壊,器物損壊
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が知人である被害者B(当時46歳)に対し強い怒りと恨みを募らせ殺害したことを中心として、住民票不正取得のための有印私文書偽造・同行使、被害者宅への建造物損壊・器物損壊、そして殺人に用いた包丁の銃砲刀剣類所持等取締法違反(刀剣類の不法携帯)が起訴された事件です。被告人は服役中に受け取った元交際相手Aからの別れを告げる手紙や、親族とA・Bとのトラブルを伝える母親の手紙から、被害者Bが被告人の親族や元交際相手に対し不当な働きかけをしていると推測し、怒りを募らせました。出所後、被告人は被害者の居所を突き止めるため、令和元年5月21日、名古屋市南区役所において、便箋に委任状を偽造してA名義の住民票の写し交付申請を行いました。これにより被害者と元交際相手が同居する住居を特定し、同月24日にはスクレーパーで玄関ドア・窓・インターフォンを破壊(損害額約113万円)。さらに翌25日深夜、路上で被害者を待ち伏せ、逃げる被害者を追跡しながらスクレーパーで頭部を殴打、刃体約24.5センチの刺身包丁で胸部などを多数回突き刺し、胸部刺創による大動脈切破に基づく出血性ショックで死亡させて殺害しました。 【判旨(量刑)】 名古屋地方裁判所は被告人を懲役21年に処し、未決勾留130日を算入、偽造委任状・包丁・スクレーパーを没収しました。判決は、殺人の犯行態様について、逃げる被害者を追いかけ、スクレーパーで何度も殴った上、鋭利な刺身包丁で多数回突き刺し、被害者が動かなくなった後も蹴りつけ胸を突き刺すという、一方的で執拗かつ激烈な攻撃であり、頭部・胸部等の急所集中から強い殺意が認められ、残虐で悪質と評価しました。事前に刺身包丁を購入し外出先で待ち伏せた点に相応の計画性を認めています。動機については、刑務所という隔絶された環境で意思疎通が困難な状況下、手紙の情報を基に被害者への怒りを増幅させた心情は理解できなくはないものの、殺害の動機としてはあまりに身勝手かつ短絡的で酌量の余地は乏しいと断じました。また、被告人が薬物事犯等で多数回の服役前科を有し、前刑出所からわずか9日目に怨恨に基づく殺人に及んだ点も強く非難されるべきとしました。被害者の苦痛・恐怖は大きく、落ち度のない死亡結果は重大で、遺族の厳罰感情も当然とされる一方、被告人は犯行を認め謝罪の言葉を述べるものの、被害者本人に対する謝罪や後悔の言葉はなく反省は不十分と指摘しています。殺人以外の各犯行についても被害弁償がなく犯情は芳しくないとしつつ、単独で刃物により1人を殺害した殺人事案としては非常に重い部類に属すると位置づけ、求刑懲役25年に対し、主文の懲役21年が相当としました。