AI概要
【事案の概要】 本件は、事件当時現職の警察官であった被告人が、妻と幼い子供2人の合計3名を殺害したとして殺人罪に問われた事案である。検察官は死刑を求刑し、被告人は犯行を全面的に否認、弁護人は第三者による犯行やA(妻)自身が子供たちを殺害した可能性があるとして無罪を主張した。事実関係としては、平成29年6月5日深夜から翌6日未明にかけて、福岡県小郡市の被告人方1階台所でA(当時38歳)が頚部圧迫による窒息で殺害され、2階寝室では長男B(当時9歳)と二男C(当時6歳)がひも状の物で絞頚され窒息死させられた。被告人は3名の遺体を家の中に残したまま、同日午前6時53分頃に普段通り出勤している。事件の背景には、妻Aが日常的に被告人を厳しく叱責し、時に暴力を振るい、GPSで居場所を監視するなど夫婦関係が悪化していた事情や、被告人が昇任試験に不合格となった事実、Aに男友達の存在が発覚しかけていた事情があった。 【争点】 被告人が3名を殺害した犯人であると認定できるか、すなわち、外部からの侵入者による犯行の可能性や、A自身が子供たちを殺害した可能性が合理的な疑いとして残るかが主要な争点となった。また、有罪と認定された場合に死刑を選択することが真にやむを得ないといえるかも争点となった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、死後硬直・死斑・直腸温などから3名の殺害時間帯を特定した上で、その時間帯に被告人が在宅していたこと、遺体を残して通常通り出勤したこと、侵入痕跡や金品物色・性的被害の跡がないことから外部犯の可能性を否定した。さらに被告人の左腕にA(被害者)が爪を立てた痕と矛盾しない傷があり、Aの爪や首から両名の混合DNA型が検出されたこと、日常的な叱責による鬱憤蓄積と殺害動機となり得る事情があったことを挙げてA殺害を認定した。子供たちについても、Aが直前まで通常の育児・予定入れをしており殺害に及ぶ状況にないこと、被告人が3遺体をつなぐようにライター用オイルをまいて放火し証拠隠滅を図ったことから、被告人による犯行と認定した。量刑については、3名の生命を奪った結果は極めて重大で、特に9歳と6歳の子供たちには落ち度が一切なく、実父の手で未来を閉ざされたこと、犯行態様が首を絞めて窒息死させるという確定的殺意を要するものを3度繰り返しており生命軽視が甚だしいこと、証拠隠滅行為に出ていること、反省の情が認められないこと、遺族の処罰感情が峻烈であることを指摘した。他方、計画性がないこと、A殺害に至る経緯に同情の余地がないとはいえないこと、前科前歴がなく約15年間警察官として勤務してきたことを有利事情として考慮した。これらを総合し、死刑を回避すべき事情は見いだせず、死刑の選択は真にやむを得ないとして、被告人を死刑に処した。