非認定処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、宝塚医療大学などを運営する学校法人であり、その設置する横浜医療専門学校において、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師養成施設を新設すべく、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき師法)2条2項に基づき、入学定員30名の認定を厚生労働大臣に申請した。 しかし、厚生労働大臣は、医道審議会の答申を踏まえ、平成28年2月5日付けで、同法附則19条1項に基づき、「視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要がある」として、本件申請を認定しない旨の処分(本件処分)をした。 あはき師法附則19条1項は、昭和39年の同法改正時に、視覚障害者の職域を守るために設けられた規定であり、当分の間、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設の新設や定員増加を抑制することを可能とする、いわば一種の許可制を定めている。本件は、この規制立法の合憲性自体が正面から争われた注目される事件である。原告は、制定から50年以上が経過し、障害年金制度の拡充やICT技術の普及等により視覚障害者をめぐる社会事情は大きく変化したなどと主張して、本件処分の取消しを求めた。 【争点】 主たる争点は、(1)あはき師法附則19条1項が、職業選択の自由を保障する憲法22条1項に違反するか、(2)要件が不明確であるとして憲法31条・13条に違反するか、(3)本件申請への適用が憲法14条1項(平等原則)等に違反するか、であった。 【判旨】 東京地裁民事第3部(古田孝夫裁判長)は、原告の請求を棄却した。 裁判所は、最高裁の薬事法判決等を踏まえつつ、本件規制は社会的・経済的に弱い立場にある視覚障害者を保護するという積極的な社会経済政策に基づくものであるから、立法府の裁量的判断を尊重し、「著しく不合理であることが明白」といえる場合に限り違憲となると判断した。 その上で、視覚障害者の就業率は現在も21.4%と低水準であり、特に重度視覚障害者の有職者の7割超があん摩マッサージ指圧師関係業務に就いていること、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師の年収の約76%が300万円以下であるのに対し視覚障害者以外の者の平均は636万円に上ること、規制のない柔道整復師等では養成施設の大幅増加が生じていることなどを指摘。附則19条1項の規制がなくなれば視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師が急増して視覚障害者の職域を圧迫するおそれがあるとして、立法目的の正当性と規制の必要性・合理性はなお維持されていると判断した。 また、医道審議会への諮問という手続的担保が設けられていること、制限も全面的禁止ではなく諸事情を勘案した限定的なものであることから、立法府の裁量の範囲を逸脱し著しく不合理であるとは認められないとして、憲法22条1項違反の主張を退けた。憲法31条・13条違反、14条1項違反の主張についても、立法技術上の制約や昭和57年の先例との事情の差異を理由にいずれも排斥し、本件処分は適法であるとした。