AI概要
【事案の概要】 原告(シーシーエス株式会社)は,発明の名称を「光照射装置」とするLED光照射装置の特許権(特許第4366431号)を有する光学機器メーカーである。本件特許は,LED基板に搭載するLEDの個数を「順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数」とし,かつ「複数のLED基板をライン方向に沿って直列させる」ことで,部品点数や製造コストの削減と基板の汎用性向上を図る技術に関するものであり,出願後に2度の訂正審判を経て減縮されていた。被告(株式会社レイマック。旧商号・株式会社イマック)は,工業用検査等に用いるライン照明「60万ルクス ブライマックスライン照明II」シリーズ(IDBB-LSRシリーズ7製品)を製造・販売する競合メーカーである。原告は,被告製品が本件再訂正発明の技術的範囲に属するとして,大阪地裁に差止め,廃棄,損害賠償約1億円(予備的に不当利得返還)を請求した。被告製品が技術的範囲に属すること自体に争いはなく,争点は専ら被告側の無効・先使用の抗弁と損害額の算定にあった。 【争点】 主要な争点は,①再訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものとして訂正要件(特許法126条6項)に違反するか,②被告が出願前から販売していた複数の従前製品に基づく進歩性欠如または先使用権(同法79条)の成否,③消滅時効の成否,④特許法102条2項による損害額の推定の適否とその覆滅の程度,および共有持分(三菱化学との共有期間)による損害額の調整である。 【判旨】 大阪地裁(杉浦正樹裁判長)は,再訂正はLED基板の枚数や配置方向を限定する減縮であって実質上の変更には当たらないとし,進歩性についても,LEDを最小公倍数とする構成に置き換える動機付けは被告従前製品のカタログ等から見出せず,むしろ阻害要因があるとして無効理由を認めなかった。先使用権についても被告各従前製品は本件再訂正発明と相違点を有し技術的範囲に属しないとして排斥した。そのうえで差止めを認容する一方,受注中止と在庫不存在から廃棄請求は棄却した。損害については特許法102条2項の適用を認めつつも,本件発明の顧客吸引力は低く,被告製品の需要は光量等の機能によって喚起されており,原告自身が本件発明を実施していないことから,推定の大部分を覆滅すべきと判断した。さらに,平成24年7月から平成26年11月まで本件特許が三菱化学との共有であった期間については,不実施共有者の持分相当分を特許法102条3項に基づき実施料相当額の限度で控除し,原告の逸失利益を910万4068円,弁護士・弁理士費用90万円を加えた合計約1000万円の支払いを命じた。訂正審判後に特許権侵害とされた者の過失推定は覆滅しないこと,消滅時効の起算にはカタログの一般的注意喚起や展示会での接触のみでは侵害認識の立証として足りないことも併せて判示され,特許法102条2項の推定覆滅と共有特許の処理に関する先例として実務上参考になる事例である。