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知財

意匠権侵害差止等請求事件

判決データ

事件番号
平成29ワ5108
事件名
意匠権侵害差止等請求事件
裁判所
大阪地方裁判所
裁判年月日
2019年12月17日
裁判官
谷有恒野上誠一島村陽子

AI概要

【事案の概要】 本件は、「SIX PAD Abs Fit」という腹筋用のEMS(電気的筋肉刺激)トレーニング機器を製造販売する原告(株式会社MTG)が、類似のトレーニング機器を販売する被告(株式会社ドリームファクトリー)に対し、意匠権侵害を理由として被告商品の製造・販売等の差止め、金型の廃棄、及び損害賠償を求めた事案である。 原告は、6枚のパッド片を中央の円形操作部を中心に左右対称に配置したトレーニング機器について意匠登録(第1536247号)を受けていた。被告は平成29年1月ころから、同じく中央に円形操作部を有し6枚のパッド片様の形状を備えたトレーニング機器を、他商品購入の特典品及び有償販売で市場に投入した。原告は、被告商品の意匠がこの登録意匠に類似すると主張して提訴した。 本訴に先立ち、原告は不正競争防止法に基づく仮処分を申し立て、東京地裁及び知財高裁で被告商品の形態が原告商品と混同を生じさせるとして製造差止めが認められていた。他方、被告意匠そのものについては、原告が特許庁に意匠登録無効審判を請求したものの、特許庁は「両意匠は類似しない」として請求を不成立とし、知財高裁もこれを維持、令和元年10月に上告不受理決定で確定していた。本件訴訟はこの意匠類否判断とは独立した意匠権侵害訴訟として審理された。 【争点】 中心的な争点は、被告意匠が本件意匠に類似するか、すなわち両意匠が需要者の視覚を通じて起こさせる美感において共通するかであった。原告は、円形の操作部を中央に配し6枚のパッド片を左右対称に2列3段で配置するという基本的構成自体が、先行の公知意匠(SPOPAD等4枚パッド片の商品など)に見られなかった斬新な要部であり、ここが共通する以上、具体的形状の差異を凌駕して両意匠は類似すると主張した。 これに対し被告は、「six pack」(6つに割れた腹筋)を鍛える目的のEMS商品では6枚パッド片構成は機能的・技術的に不可避であり、中央操作部も電気配線の合理性から導かれる定型的形態にすぎず、出願前にもヒラタ意匠等の類似構成が存在したから本件意匠の要部とはいえないと反論した。また被告は、各パッド片の具体的形状、切込みの形状と深さ、上下対称性の有無等の差異点は、本件意匠が与える男性的・力強い印象と、被告意匠が与える楓の種をモチーフとした女性的・優美な印象とを決定的に隔てるものだと主張した。 【判旨】 大阪地裁は原告の請求をいずれも棄却した。 まず裁判所は、意匠の類否は物品の形状等が需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づき判断すべきものとした上で(意匠法2条1項、24条2項)、本件意匠の要部について、6枚パッド片を中央で結合する基本的構成のみならず、各パッド片の具体的形状、結合の向き、切込みの形状と深さまでもが全体として需要者の注意を引く要部を構成すると認定した。原告が主張する「基本的構成のみが要部」との理解は、意匠権を具体的美感から離れて上位概念化するものとして採用できないとした。 その上で要部の対比を行い、本件意匠は各辺が概ね直線状で略V字形の切込みを持ち、中央部分が略6角形状に見えることから、機械的・幾何学的で上向きかつがっしりとした、躍動感や力強さを感じさせる印象を与えるのに対し、被告意匠は上下対称でパッド片の輪郭に曲線が多く、上段・下段パッドが一対の羽根を広げたような形状に見えるなど、しなやかで軽快な印象を与えるとして、両者の美感の差異は要部の共通点による同一性を上回ると判断した。 結論として、被告意匠は本件意匠に類似しないから侵害は成立せず、差止・廃棄・損害賠償の各請求はいずれも理由がないとした。加えて裁判所は、被告意匠登録が確定しており被告意匠は本件意匠又はこれに類似する意匠の利用関係にも立たないから(意匠法26条1項、2項)、被告商品の製造等は被告自身の登録意匠の実施権の範囲内の行為であることも付言した。本判決は、仮処分段階で不正競争防止法上の「混同のおそれ」が肯定された事案であっても、意匠法上の類否判断は別個に行われ、機能上共通する構成要素よりも具体的形状が与える美感の差異を重視するという、意匠権侵害訴訟の判断枠組みを示すものである。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。