損害賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1ネ2884
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年12月19日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 岩井伸晃、馬場純夫、片野正樹
- 原審裁判所
- 水戸地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、指定暴力団D会傘下のF一家に所属するAが主導した特殊詐欺グループ(本件詐欺グループ)による、いわゆる「オレオレ詐欺」の被害者らが、D会の会長である1審被告及び特別相談役である1審被告に対し、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)31条の2に基づき損害賠償を求めた事案の控訴審である。本件詐欺グループは、被害者の親族になりすまし、親族が現金を至急必要としているかのように装って金員をだまし取る手口を用いていた。1審原告らのうち2名は合計数百万円相当の金員を詐取され、1名(1審原告X)は嘘を見破ったため詐取を免れた。 暴対法31条の2は、指定暴力団員が「威力利用資金獲得行為」を行うことで他人に損害を与えた場合、指定暴力団の「代表者等」が無過失の損害賠償責任を負うと定める規定であり、民法715条の使用者責任の特則として、暴力団の構成員による資金獲得活動全般にトップの責任を及ぼす趣旨の規定である。原審は、詐取された2名の請求を大部分認容したが、詐取を免れた1審原告Xについては慰謝されるべき精神的損害を被ったと認められないとして棄却したため、1審原告X及び1審被告らの双方が控訴した。 【争点】 争点は主に3点である。第1に、特別相談役である1審被告がD会の「代表者等」に該当するか。第2に、本件詐欺行為が暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」に該当し、Aらが自己の利益のために行った詐欺についても同条の責任が及ぶか(1審被告らは民法715条の使用者責任の要件が必要と主張)。第3に、詐取を免れた1審原告Xについて、暴力団が関与する特殊詐欺の標的とされたこと自体による精神的損害の賠償が認められるか。 【判旨】 東京高裁は、1審原告ら及び1審被告らの控訴をいずれも棄却した。 まず「代表者等」該当性については、特別相談役の1審被告は、約16年間D会会長を務めた後、平成17年4月以降もD一家総長として後進の会長らに強い影響力を及ぼしており、暴対法3条3号の「運営を支配する地位にある者」に該当すると認めた。 次に1審被告らの責任論について、暴対法31条の2は民法715条の特則であり、同条所定の「事業の執行について」の要件に代えて「威力利用資金獲得行為…を行うについて」との要件を定めたものであるから、民法715条の要件該当性を検討するまでもなく、暴対法の要件を満たす以上、1審被告らは責任を負うと判示した。 詐取を免れた1審原告Xについては、財産的損害がなく、暴力団員から直接の威迫等の危害を受けたこともなく、詐欺グループの構成員との人的関係も認められないことから、一定の不安感を覚えたことを斟酌しても、損害賠償をもって慰謝すべき精神的損害を被ったとまでは認め難いとして請求棄却を維持した。本判決は、特殊詐欺と暴力団との結びつきが社会問題化する中、暴対法31条の2の適用範囲を具体的事案に即して明確化した実務上重要な判断である。