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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成31行ケ10006
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年12月25日
裁判官
鶴岡稔彦山門優高橋彩

AI概要

本件は、花粉症・アレルギー性鼻炎の治療薬として知られるステロイド点鼻薬「モメタゾンフロエート」の水性懸濁液を、1日1回鼻腔内に投与する用法・用量を特徴とする医薬用途発明(特許第3480736号)について、その特許を無効とした特許庁の審決の取消しを求めた事件です。 【事案の概要】 特許権者である第2事件原告(米国製薬会社メルク・シャープ・アンド・ドーム)は、「気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用」と題する発明について特許権を有していました。請求項の中心は、モメタゾンフロエートの水性懸濁液を1日1回鼻腔内に投与するアレルギー性鼻炎治療薬というもので、1日1回の投与量を100〜200マイクログラムとし、未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティ(体内に吸収される割合)を約1パーセント未満とする下位請求項を含みます。ジェネリック医薬品メーカーである被告(東興薬品工業)は、特許庁に対し、本件発明は先行公開特許(甲1文献)に開示された炎症治療用のモメタゾンフロエート鼻腔投与懸濁液と、学術論文(甲2文献)及び本件優先日(平成6年1月27日)当時の技術常識を組み合わせれば容易に想到できたとして進歩性欠如を理由に無効審判を請求し、特許庁はこれを認めて特許を無効とする審決をしました。これに対し、特許権者と、通常実施権者である第1事件原告(杏林製薬)が審決取消訴訟を提起したのが本件です。 【争点】 争点は大きく分けて、(1)甲1発明と本件発明の一致点・相違点の認定の当否、(2)「1日1回投与」という用法を当業者が容易に想到できたか、(3)投与対象を「アレルギー性鼻炎」と特定する点の容易想到性、(4)投与量を100〜200マイクログラムと特定する点及び「バイオアベイラビリティ約1%未満」という数値限定の容易想到性、(5)本件発明の効果が当業者の予測を超える顕著なものといえるか、という5点です。特に原告らは、モメタゾンフロエートの血中半減期は短く、構造活性相関や他ステロイドとの比較からも1日1回投与は予測できず、また極めて低いバイオアベイラビリティでありながら治療効果を発揮する点は顕著な効果であると強く主張しました。 【判旨】 知財高裁第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、原告らの請求をいずれも棄却しました。裁判所は、本件優先日当時、モメタゾンフロエートが強い局所抗炎症作用を持つ一方で副作用が弱いステロイドであることは技術常識として知られ、鼻腔内投与されるステロイド薬には既に1日1〜4回の用法が存在し、患者のコンプライアンスの観点から1日1回投与に利点があることも周知であったと認定しました。その上で、当業者が他の局所活性ステロイドの用法・用量を参考にして最適な投与回数・投与量を設定することは通常の作業であり、1日1回投与や100〜200マイクログラムの用量、アレルギー性鼻炎への適用のいずれも容易に想到し得たと判断しました。また「絶対的バイオアベイラビリティ約1%未満」という数値は投与量や濃度に依存しない物質固有の客観的性質であり、甲1発明の懸濁液にも当然備わっている構成であって実質的な相違点ではないとしました。効果の顕著性についても、1日1回投与で治療効果があり全身性副作用が少ないという効果は技術常識から予測できた範囲を超えるものではなく、原告らが主張する1日2回投与との比較効果は本件明細書に記載がなく、後に判明したフロエート部分の特性も優先日後の知見であるから進歩性判断の資料にできないと退けました。結論として、審決の相違点認定や効果の認定には一部誤りがあるものの、進歩性を否定した結論に誤りはないとして、審決は維持されました。本判決は、医薬用途発明における1日1回投与という用法・用量の発明について、他のステロイドの公知の用法や技術常識をどこまで援用できるかを判断した事例として、医薬分野の特許実務に参考となるものです。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。