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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成31行ケ10027
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年12月25日
裁判官
鶴岡稔彦山門優高橋彩

AI概要

【事案の概要】 本件は、椅子式マッサージ機のメーカーである原告(ファミリーイナダ株式会社)が、競合メーカーである被告(株式会社フジ医療器)の保有する「椅子式マッサージ機」に関する特許(特許第5162718号)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が「無効審判請求は成り立たない」との審決をしたため、その審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 被告の特許は、座部・背凭れ部・肘掛部を備えたマッサージ機に関するもので、背凭れ部の左右側壁内側面に膨縮袋(エアバッグ)を設けて肩や上腕をマッサージし、肘掛部には前腕をマッサージする機構を設け、さらに背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体が傾くように構成している点に特徴がある。これにより、リクライニング角度にかかわらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら空圧施療ができるとされていた。 原告は、この特許について、補正要件違反、実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反、不適法な分割出願であることを前提とする進歩性欠如、公知文献に基づく進歩性欠如など6つの無効理由を主張したが、いずれも特許庁の審決で退けられたため、本件訴訟を提起した。 【争点】 主たる争点は、(1)構成要件D(肘掛部の後部と背凭れ部の側部とを連結する連結部、及び肘掛部の下部に設けられた回動部に関する構成)や構成要件F(リクライニング角度にかかわらず着座姿勢を保つ点)についての本件補正が新規事項の追加に当たるかどうか、(2)本件明細書の記載が当業者にとって実施可能な程度に明確かつ十分に記載されたものといえるか(実施可能要件)、(3)公知文献に記載された発明との対比において進歩性を欠くかどうかである。 特に実施可能要件については、本件発明は「背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体がリクライニング方向に傾き、かつ施療者の上半身の着座姿勢が保たれる」という機能を実現するために、肘掛部と背凭れ部の連結、肘掛部と座部の連結、背凭れ部と座部の連結という3つの連結関係が協調する必要があり、本件明細書にそのような具体的機構が開示されているといえるかが問題となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、原告の請求を認容し、審決を取り消した。 裁判所は、事案に鑑みまず実施可能要件に関する取消事由(無効理由2)について判断した。特許法36条4項1号は、発明の詳細な説明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載することを求めており、これを満たすためには、当業者が明細書の記載と出願当時の技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなく発明を実施できる程度の記載が必要であるとの規範を示した。 そのうえで、本件明細書には、肘掛部の後部と背凭れ部の側部を連結する連結部142aによる回動関係や、肘掛部全体を座部に対して回動させる回動部141aは記載されているものの、背凭れ部を座部に対してリクライニングさせる連結手段の具体的構成や、これら3つの連結手段を組み合わせて構成要件D~Fの機能を実現する具体的機構については記載も示唆もないと認定した。 裁判所は、本件発明が求める機能を実現するには各手段が協調する必要があり、単に適宜の手段を選択すれば足りるものではなく、技術的創意を要するものであると指摘。明細書の記載が実施可能要件を満たすためには、必要な機能を実現する具体的構成を示すか、少なくとも当業者が技術常識に基づき具体的構成に至り得るような示唆を与える必要があるが、本件明細書にはそれがないと判断した。被告が主張する具体的構成についても、明細書に記載も示唆もなく、技術常識から当業者が直ちに採用し得たとする証拠もないとして退けた。 以上により、本件明細書の発明の詳細な説明は実施可能要件に適合せず、これに反する審決の判断には結論に影響する誤りがあるとして、その余の取消事由について判断するまでもなく審決を取り消した。 本判決は、機能的な構成要件を含む特許について、明細書の記載が単に構成の一部のみを開示するにとどまる場合には実施可能要件違反となり得ることを明確にしたもので、特許の明細書作成実務に重要な示唆を与える判決である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。