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【事案の概要】 被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、令和元年9月10日頃、兵庫県尼崎市内の被告人方において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類を含む白色粉末を飲み込み、覚せい剤を使用した。本件に至る経緯として、被告人は自らが起こした高速道路上でのエアガン発射事件が大きく報道されたことでパニック状態に陥り、「死にたい」との思いを先輩に伝えた。すると、その先輩から白色粉末を手渡され、覚せい剤かもしれないと認識しながらも、現実逃避のためにこれを飲み込んで使用したと供述している。被告人には、平成27年12月4日に大阪地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役2年6月の判決を受け、平成30年1月14日に刑の執行を終了した累犯前科があり、同種前科はこれを含め4犯に及ぶ。検察官は懲役3年6月を求刑した。 【判旨(量刑)】 名古屋地方裁判所は、被告人を懲役2年8月に処し、未決勾留日数のうち40日をその刑に算入した。量刑にあたり裁判所は、本件の経緯・動機には酌むべき点がなく、むしろ被告人が覚せい剤取締法違反又は同罪を含む前科4犯を有し、いずれも服役して矯正教育を受けたにもかかわらず、再び同種犯行に及んだものであって、いまだ覚せい剤に対する親和性・依存性が認められる点を重視した。これらの事情からすれば本件の犯情は悪く、被告人の刑事責任は相応に重いと評価される。他方で、被告人が罪を認めて反省の態度を示していること、民間団体Aに対し1万円の贖罪寄付を行ったこと、家族のためにも二度と覚せい剤を使用しない旨誓っていることなど、被告人に有利な事情も認められる。もっとも、これらの酌むべき事情を十分に考慮しても、なお実刑をもって臨むほかなく、主文掲記の刑が相当であるとされた。覚せい剤自己使用の再犯事案における量刑判断として、前科の回数・累犯性と矯正教育の効果の乏しさを重く評価し、反省や贖罪寄付等の情状を一定程度考慮しつつ、求刑よりはやや下回る実刑を選択した事例である。