AI概要
【事案の概要】 本件は、米国ニューヨークで創業されたステーキ専門店「EMPIRE STEAK HOUSE」を運営する原告(アールジェイジェイ・レストラン・エルエルシー)が、牛の図形と「EMPIRE」「STEAK HOUSE」の文字を組み合わせた結合商標について、第43類「レストランにおける飲食物の提供、レストランサービスの実施、ケータリング」を指定役務として国際商標登録出願(本願商標)をしたところ、特許庁が拒絶査定をし、さらに拒絶査定不服審判請求も成り立たないとの審決(本件審決)をしたため、原告が審決の取消しを求めた事案である。 特許庁は、本願商標が、既登録の標準文字商標「EMPIRE」(指定役務「焼肉料理・海鮮料理およびその他の飲食物の提供」等、以下「引用商標」)と類似し、商標法4条1項11号に該当すると判断した。原告は平成29年10月に東京・六本木に店舗を開店しており、本願商標の全体をもって「エンパイアステーキハウス」という一体の店名として認識されているとして争った。 【争点】 主たる争点は、(1)本願商標から「EMPIRE」の文字部分を要部として抽出し、これと引用商標とを比較して類否を判断することが許されるか、(2)本願商標と引用商標が類似するか、である。原告は、「STEAK HOUSE」の語は我が国ではごく限られた店にしか使用されていない造語的な表現であり、「EMPIRE」と結合して「帝国のステーキハウス」という独自の観念を生み出しているため、分離観察は不自然であると主張した。また、原告店舗は高級店で予約客が中心であり、「EMPIRE」単独で略称されることはないとの取引の実情も主張した。 【判旨】 知財高裁は原告の請求を棄却した。まず最高裁判例(昭和38年第一小法廷判決ほか)を引用し、結合商標の構成部分の一部が出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合等には、要部抽出による類否判断が許されるとの一般論を確認した。その上で、本願商標は牛の図形、「EMPIRE」、「STEAK HOUSE」の各構成部分が視覚上分離して認識され、不可分的結合とはいえないこと、中央に大きく配置され赤色の二重線で強調された「EMPIRE」の文字部分が強く印象づける特徴を備えていることを認定した。 そして「STEAK HOUSE」については、ウルフギャング、ベンジャミン、モートンズ等の多数の店舗名で現に用いられ、日本標準産業分類でも「飲食サービス業」の一業態として例示されるなど、「ステーキ専門店」を表す語として一般に用いられており、店名の略称時に省かれることも普通であるとして、識別機能が微弱であるとした。牛の図形部分も、提供食材をモチーフとする図形は飲食業で広く採択される手法であり、識別機能が微弱であると判断した。 以上から「EMPIRE」の文字部分を要部として抽出でき、引用商標と対比すると、外観は紛らわしく、称呼(エンパイア)・観念(帝国)は同一であって、両商標は類似すると結論づけた。原告主張の取引の実情については、米国店舗の事情は我が国の取引実情を反映しないこと、実際には「エンパイア」と略称する記事も存在することから、混同のおそれを否定する事情には当たらないとされ、本願商標は商標法4条1項11号に該当するとの審決判断に誤りはないと判示された。