都道府県を選択して、裁判官を探すことができます

全国 2522 人の裁判官3115 件の口コミ
下級裁

殺人(予備的訴因|殺人教唆)

判決データ

事件番号
平成30う10
事件名
殺人(予備的訴因|殺人教唆)
裁判所
福岡高等裁判所
裁判年月日
2018年11月1日
裁判種別・結果
破棄自判
裁判官
根本渉渡邉一昭佐久間隆
原審裁判所
宮崎地方裁判所

AI概要

【事案の概要】 本件は、暴力団D会の副本部長の立場にあった被告人が、対立関係にあったF組関係者E(当時43歳)の殺害について、D会関係者Aらと共謀したとして殺人罪で起訴され、予備的訴因として殺人教唆罪でも起訴された事件である。 事件は平成28年8月19日未明、宮崎市内の駐車場で発生した。当時、F組を離脱した被告人に対し、Eがけじめをつけるよう要求していたという背景事情があり、当日EがD会事務所付近に出向いたところ、D会会長Hや副本部長である被告人を含む多数のD会関係者らと、EおよびC・Bの3名が対峙する緊迫した状況となった。その後、D会理事長補佐であるGとCが殴り合いとなって乱闘に発展し、Gの直属の配下であるAがD会事務所に戻って刃物を持ち出し、本件駐車場でEの右上腹部を刺突して出血性ショックにより死亡させた。 検察官は、被告人が対峙の場面で他のD会関係者らに対し「道具持ってこい。」と指示したことが凶器使用による危害を含む指示であり、Aによる殺害と共謀が成立すると主張した。原審(宮崎地裁)は、目撃者Cの証言を信用できるとし、被告人にも条件的・未必的殺意および共謀共同正犯の成立を認めて有罪としたが、弁護人は事実誤認があるとして控訴した。 【争点】 第一に、被告人が「道具持ってこい。」と発言した事実を認定できるか、とりわけ唯一の直接証拠であるC証言の信用性が争点となった。第二に、仮に同発言があったとしても、それが言外に危害を加える指示を含み、未必的殺意および共謀共同正犯の成立を基礎づけるかが問題となった。 【判旨(量刑)】 福岡高裁宮崎支部は、原判決を破棄し、被告人を無罪とした。 まず発言内容の評価について、「道具持ってこい。」との指示は文言上、凶器の準備を求めるものにすぎず、言外に危害を加える指示を認めるには合理的根拠が必要であると判示した。本件では、D会会長Hが怒鳴り合いを抑えて暴力沙汰には至っていなかった段階の発言であり、暴力団員間に凶器準備の指示が当然に危害を加える指示を意味するという経験則も、D会内部にそのような共通認識があった証拠もない。刃物類には示威目的の用途もあり得ることから、同指示が当然に危害を予定するものとはいえないとした。 次にC証言の信用性について、①Cは発言者を目撃したのではなく声の方向を見たら被告人がいたという識別証言にすぎず、原判決は声による識別の信用性を肯定する根拠を示していないこと、②実行犯Aは「Gから指示を受けた、被告人は発言していない」と供述し、Gには「お腹が出ている」という顕著な身体的特徴があるのにCはその特徴を根拠に挙げていること、③同じ場面を体験したBは対峙の場面では発言を聞いていないと明確に証言していること、④Cの供述は事件から相当期間経過後に唐突に現れた変遷供述であること、⑤CにはEの遺志を忖度して被告人を陥れる虚偽供述の動機が存在し得ることを指摘した。これらから、Cの記憶が変容した疑いを払拭できず、原判決の信用性判断は論理則・経験則に反すると断じた。 その結果、主位的訴因の殺人共謀共同正犯も、予備的訴因の殺人教唆も、「道具持ってこい。」発言自体を認定できない以上成立せず、犯罪の証明がないとして刑訴法336条により無罪を言い渡した。暴力団関連事件における共謀認定の慎重性と、唯一の直接証言の信用性判断における論理則・経験則の厳格な適用を示した重要な判断である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。