AI概要
【事案の概要】 本件は、中華人民共和国籍の女性技能実習生である原告Aが、監理団体である被告協同組合つばさを介し、実習実施機関であり大葉栽培を営む被告Cとの間で雇用契約を締結したところ、被告Cに対し、所定労働時間外に行った「大葉巻き作業」(摘み取った大葉を10枚ずつゴムで束ねる作業)の未払残業代約165万円及び付加金、被告Cの帰責事由により労務提供不能となったとして平成27年1月以降の賃金約259万円、被告Cの父である被告Dからセクシュアル・ハラスメント被害を受けこれに各被告が適切に対応しなかったとして慰謝料等330万円の支払を求めた事案である。併せて、被告組合の事務員であった原告Bが、平成26年12月15日付けで普通解雇されたことが解雇権濫用に当たり無効であるとして、雇用契約上の地位確認と解雇後の未払賃金・賞与の支払を求めた。外国人技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的として創設された制度であり、監理団体は実習実施機関における技能実習の適正実施を確認・指導すべき立場にある。被告C方では日中に大葉の摘み取りを行わせた後、午後5時以降に技能実習生に1束2円の対価で大葉巻き作業をさせており、これが実習計画外の作業であったことが本件の背景にある。 【争点】 主な争点は、大葉巻き作業が雇用契約に基づく労務提供か、別個の請負契約に基づくものか、原告Aの労働時間及び未払残業代の算定方法、被告Cに労務提供不能についての帰責事由があるか、被告Dによるセクハラ行為の存否及びこれに関する各被告の法的責任、被告組合による原告Aに対する権利行使妨害の有無、そして原告Bに対する本件解雇に客観的合理性及び社会通念上の相当性があるか(労働契約法16条)の諸点である。 【判旨】 裁判所は、大葉巻き作業について、①形式的には1束2円の請負契約として合意されたものの、作業内容が雇用契約の業務である大葉摘み取りと密接に関連していること、②平成25年以降は全ての大葉巻き作業を技能実習生が担っており、原告Aには諾否の自由が事実上制限されていたこと、③作業時間についての裁量性も乏しかったことから、被告Cの指揮監督下で行われた雇用契約に基づく労務であると認定した。未払残業代の算定については、他の技能実習生が和解で受け入れた「1時間当たり200束」という基準を合理的として採用し、未払残業代99万8380円及び同額に近い付加金99万4805円の支払を命じた。他方、原告Aが雇用契約終了後テンアップファームに移籍した経緯は、セクハラ申告等を契機として被告Cと原告Aの合意により雇用契約を終了させたものと評価し、労務提供不能に関する被告Cの帰責事由や不法行為を否定した。被告Dのセクハラ行為については、原告Aの供述の曖昧さ、本件セクハラ証明書の作成経緯、共同生活していた他の女性技能実習生がセクハラを否定していることなどから認定できないとし、これを前提とする被告Cの安全配慮義務違反・使用者責任、被告組合の共同不法行為責任はいずれも棄却した。権利行使妨害の主張についても、被告組合は一定の和解案を提示しており違法行為は認められないとした。原告Bに対する本件解雇については、警察への虚偽の通報を繰り返し被告組合の信用毀損・業務妨害に及んだこと、監査結果報告書の無断持出し、職務命令に反する無断外出及び被告組合に対する敵対的発言があったことから、客観的合理性及び相当性を認め有効と判断し、同原告の請求を全て棄却した。本判決は、外国人技能実習生の労働時間外における周辺作業の労務性判断基準を示すとともに、セクハラ認定における供述の信用性評価の在り方を示した事例として意義がある。