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知財

特許権侵害行為差止等請求事件

判決データ

事件番号
平成29ワ17791
事件名
特許権侵害行為差止等請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2018年11月9日

AI概要

【事案の概要】 本件は、「マグネット歯車及びその製造方法、これを用いた流量計」を名称とする特許第5554433号の特許権者である原告(タカハタプレシジョン株式会社、旧商号・高畑精工株式会社)が、被告Toshinの製造委託を受けて被告笛吹精工が製造するマグネット歯車及びこれを組み込んだ流量計用指針ユニットが本件特許権を侵害すると主張して、特許法100条1項・2項に基づく製造販売の差止め及び半製品・設備の廃棄と、民法709条に基づく損害賠償金5830万円の連帯支払を求めた事案である。 本件特許の発明は、水道メータ等の流量計に組み込まれるマグネット歯車に関するものであり、樹脂製の歯車軸の他端に設けたカシメ用突起を熱カシメによりマグネット部材に固定しつつ、軸の回転軸線方向に移動可能な間隙を確保して保持する点に特徴がある。この間隙を設けることにより、羽根車の上下振動や首振り現象が生じても磁気結合力を高める方向に自己調心が働き、マグネットカップリングの外れによる計量誤差を抑制し、一旦外れた場合でも自己復帰しやすくなるという作用効果を奏するものとされる。 被告笛吹精工の代表者はもとは原告の従業員であった人物であり、原告を退社した後、同種のマグネット歯車を製造していたという背景がある。被告らは、構成要件充足性を一部否認するとともに、本件発明は出願日(平成25年4月5日)より前の平成21年頃に原告自身が東京都水道局に納入した水道メータに組み込まれた「原告マグネット歯車」によって公然実施又は公然知られたものであるとして、特許法29条1項1号・2号違反の無効理由を主張した。 【争点】 主要な争点は、(1)被告マグネット歯車の構成要件C(カシメ用突起)・構成要件E(熱カシメによる軸線方向の間隙確保)の充足性、(2)出願前に原告自身が販売していた原告マグネット歯車による公然実施・公然知の有無、(3)プロダクト・バイ・プロセス・クレームとしての明確性要件違反の有無、(4)損害額である。 とりわけ中心的に争われたのは争点(2)であり、平成21年頃製造された原告マグネット歯車が本件発明の全構成を具備していたか否か、特に構成要件Eの「軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保して保持された」構成を当時から備えていたかが問題となった。原告は、当時のマグネット歯車には間隙はなく、被告らが検証時に確認した0.08~0.11mmの間隙は約8年の使用による経年劣化で生じたと主張し、通水実験の結果を提出した。 【判旨】 東京地裁民事第40部は、原告の請求をいずれも棄却した。 裁判所はまず、目盛板の型式承認表示(「L9910号21」)及び検定有効期限シール(「29.2」)から、原告各メータが平成21年に製造され同年頃に東京都水道局に納入されたものと認定した。そのうえで、原告マグネット歯車が構成要件A・B・C・D・F及び構成要件Eの熱カシメ部分を具備することは当事者間に争いがないと整理し、専ら軸線方向の間隙の有無を検討した。 原告の通水実験については、間隙がないよう製作したとされる試料自体が既に0.022~0.114mmの間隙を有していたこと、現時点の技術でも熱カシメホーン反転時の応力戻りにより間隙が不可避に生じること、実験前後の測定箇所の同一性に疑義があること、原告各メータの実際の積算流量が実験流量の約5分の1にとどまることから、経年劣化で間隙が生じたとの主張を採用できないとした。 さらに、原告が平成13年に作成し取引先の阪神計器及び立川プレス工業に交付した「原告作業標準」に、熱カシメ後にマグネットのガタつきを確認する旨の記載や、球R先端部からカシメリブ先端までの寸法を0.6~0.9mmと幅を持たせる管理値が記載されていたことから、原告は作業標準作成当時から軸線方向の間隙のあるマグネット歯車を製作していたと推認した。原告提出の甲17・甲18図面も、作成時期や寸法記載の欠如、4か所リブ固定という内容から、間隙がなかったことを裏付けるものではないとした。 以上から、平成21年製造当時の原告マグネット歯車は構成要件Eを含む本件発明の全構成を具備していたと認められ、本件特許は特許法29条1項1号・2号により公然実施・公然知として無効とされるべきものであり、その余の争点について判断するまでもなく原告の請求はいずれも理由がないとして棄却された。自社の過去製品が進歩性・新規性を否定する公知技術となる「自らの先行実施」による無効という、特許権者にとって厳しい結末を示した事例である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。