公務員に対する懲戒処分取消等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行コ51
- 事件名
- 公務員に対する懲戒処分取消等請求控訴事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2018年11月9日
- 裁判種別・結果
- その他
- 裁判官
- 田中俊次、竹内浩史、田中俊次
- 原審裁判所
- 神戸地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 姫路市立中学校の教諭であり柔道部顧問を務めていた控訴人は、平成27年7月、柔道部内で発生したいじめに伴う傷害事件(上級生部員2名が1年生部員に暴行を加え、全治1箇月の胸骨骨折等の傷害を負わせたもの)を把握しながら、被害生徒を医師に受診させる際、副顧問教諭及び被害生徒本人に対し「階段から転んだことにしておけ」と虚偽の説明をするよう指示した(虚偽説明指示)。また、同年8月、加害生徒を近畿中学校総合体育大会に出場させないという校長の職務命令に従わず、同生徒を出場させた(職務命令違反)。さらに、卒業生・保護者らから寄贈された洗濯機・トレーニング機器等の物品を校内に設置していたところ、校長からの再三にわたる撤去指示に約1年にわたり応じなかった(撤去指示違反)。 兵庫県教育委員会(処分行政庁)は平成28年2月、これら3つの非違行為を理由として控訴人を停職6月の懲戒処分に付し、さらに同年4月に市内別中学校への配置換えを命じた。控訴人は停職期間満了前の同年6月に辞職した上で、停職処分の取消し及び国家賠償法1条1項に基づく損害賠償約1327万円の支払を求めて提訴した。原審は請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事件である。 【争点】 主たる争点は、(1)3件の非違行為について地方公務員法上の懲戒事由が存在するか、(2)停職6月という量定が懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱・濫用したものといえるか、(3)本件配置換えの適否、(4)損害額である。被控訴人は、虚偽説明指示を単独で減給10分の1・6月相当、職務命令違反及び撤去指示違反をそれぞれ戒告相当と評価した上で、これらを併合加重して停職6月としたと主張し、控訴人は比例原則違反の重きに失する処分であると争った。 【判旨】 大阪高裁は原判決を変更し、停職処分を取り消すとともに被控訴人に対し55万円(慰謝料50万円+弁護士費用5万円)の支払を命じた。裁判所はまず、3件の行為がいずれも地公法29条1項各号の懲戒事由に該当する点は認めた。もっとも、虚偽説明指示については、医師に守秘義務があることや、当日中に校長まで報告が伝わり学校としての組織的対応に支障が生じていないことから、事件の「隠蔽」とまでは評価できず悪質性はそれほど高くないと判断し、減給10分の1・6月(減給処分の最重量定)とする被控訴人の評価には裁量権逸脱の疑いがあるとした。 その上で、最も重い非違行為である虚偽説明指示が減給相当にとどまり、他の2件は戒告相当であることに鑑みれば、過去の減給処分歴を考慮しても、減給よりはるかに重い停職を選択すること自体が社会通念上裁量権の範囲を逸脱しており、まして停職の最長期間であり懲戒免職に次ぐ重さを持つ停職6月との量定は合理的な裁量の範囲内とは到底考えられないと判示した。処分行政庁が懲戒処分の処分基準を定めないまま11段階区分で機械的に加重する方法にも合理性を欠くと指摘している。本件配置換えについては退職強要に当たらず適法としたものの、違法な停職処分により控訴人が辞職に至ったこと等を踏まえ、慰謝料50万円を相当と認めた。いじめ対応における教員の非違行為に対する懲戒量定について、比例原則の観点から裁量権行使の合理的限界を明確にした事例として実務的意義がある判断である。