AI概要
【事案の概要】 本件は、大阪府警察官として警察署の捜査係で犯罪捜査等の職務に従事していた被告人が、捜査中の事件に関する職務上の秘密を漏洩し、その謝礼として遊興飲食の饗応を受けたとして、地方公務員法違反(秘密漏洩罪)および加重収賄罪に問われた事案である。 被告人が所属していた係および大阪府警察本部の特別捜査隊では、大阪府特殊風俗あっせん事業の規制に関する条例違反事件の捜査を進めていた。被告人は、平成29年9月から12月までの間、3回にわたり、元先輩警察官で行政書士事務所に勤務するHから捜査対象や捜査状況の教示を依頼され、これに応じて、捜査対象としている特殊風俗あっせん事業所の店名や強制捜査の着手時期等、職務上知り得た秘密に当たる重要な捜査情報をHに漏洩した。 さらに被告人は、これらの漏洩が捜査情報の不正漏洩に対する謝礼の趣旨で供与されるものであることを認識しながら、同じく3回にわたり、キャバクラ等での遊興飲食の饗応を受けた。その総額は合計23万3129円相当である。饗応の内訳は、1回目が合計約5万3000円、2回目が10万円、3回目が約7万9000円相当であった。 地方公務員法34条1項は職員の守秘義務を定め、同法60条2号はその違反に懲役刑を含む刑罰を科している。捜査情報の保持は警察活動の根幹であり、その漏洩は捜査妨害を招くのみならず、公務員の職務の公正に対する国民の信頼を直接損なう重大な非違行為である。また、加重収賄罪(刑法197条の3第2項)は、公務員が職務上不正な行為をしたことに関して賄賂を収受した場合に成立し、単純収賄より重く処罰される類型である。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役2年6月に処した上、4年間刑の執行を猶予し、収受した賄賂相当額である23万3129円を追徴した(賄賂はいずれも遊興飲食の饗応であり没収不能のため追徴とされた)。量刑理由として、被告人は本件当時、捜査中の事件に関する秘密を厳格に保持すべき立場にあったにもかかわらず、元先輩警察官に対し3度にわたって重要な捜査情報を漏洩したものであり、漏洩により捜査対象店舗に情報が伝わって捜査に支障が生じかねない状況に至ったばかりか、その謝礼として遊興飲食の饗応を受けたのであって、警察官の職務の公正に対する社会の信頼を大きく損なう悪質な行為であると評価した。 裁判所はまた、被告人が積極的に賄賂の供与を求めたものではないとしつつも、キャバクラでの接待を期待して捜査情報を漏洩していた点を重視し、被告人の行為は厳しい非難に値すると断じた。他方で、被告人が反省の態度を示していること、前科前歴がないことなどの事情を考慮し、社会内での更生の機会を与えるのが相当であるとして、主文のとおり刑の執行を猶予した。検察官の求刑(懲役2年6月及び追徴)どおりの刑期を言い渡しつつ執行猶予を付した判決であり、警察官による捜査情報漏洩・収賄事案における量刑の一例として実務的な参考となる。