AI概要
【事案の概要】 本件は、大阪府警察本部の特別捜査隊に所属し、犯罪捜査等の職務に従事していた警察官である被告人が、元先輩警察官で行政書士事務所に勤務していた知人Eから、大阪府特殊風俗あっせん事業の規制に関する条例違反事件の捜査情報を漏洩してほしいとの趣旨で遊興飲食の饗応を受けた上、実際に捜査対象となっている風俗あっせん事業所の店名、強制捜査着手時期、逮捕予定者の氏名等の捜査情報をEに教示したという事案である。 被告人は、特別捜査隊が捜査中であった条例違反事件について、自己の職務上知り得た秘密を守秘すべき立場にあったにもかかわらず、平成29年9月から12月にかけて3回にわたり、飲食店において合計約18万3000円相当の遊興飲食の饗応をEから受けた。その上で、平成29年12月には警察署内に保管されていた捜査書類を閲覧した後、Eに電話で捜査対象店舗の店名や強制捜査着手時期を伝え、さらに平成30年1月には逮捕予定者の氏名等を携帯電話のメッセージ機能で送信するなどしてEに教示した。 検察官は、地方公務員法違反(守秘義務違反)及び加重収賄罪で被告人を起訴し、懲役2年6月及び追徴を求刑した。加重収賄罪は、単純収賄と異なり、公務員が賄賂を収受した上で実際に職務上不正な行為をした場合に成立するもので、法定刑が重く設定されている。本件では、被告人が賄賂を受け取るにとどまらず、現に捜査機密を漏洩する不正行為を行った点に特徴がある。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役2年6月に処し、4年間その刑の執行を猶予するとともに、賄賂相当額である18万3129円を追徴する旨の判決を言い渡した。 量刑理由として裁判所は、被告人が警察官として捜査中の事件の秘密を厳格に保持すべき立場にあったにもかかわらず、3度にわたって遊興飲食の饗応を受け、重要な捜査情報を漏洩したものであり、その結果、捜査対象店舗に情報が伝わり、捜査に重大な支障が生じかねない状況になった点を指摘した。そして、このような行為は警察官の職務の公正に対する社会の信頼を大きく損なうものであり、悪質であると評価した。 もっとも、被告人が積極的に賄賂の供与を求めたのではなく、一連の犯行は元先輩警察官であるEの強い働きかけによるものであった点は認められるものの、捜査に携わる警察官としては様々な思惑で接近してくる関係者に対して毅然と対応すべきことが当然であって、特に酌量すべき事情とはいえず、被告人の行為は厳しい非難に値すると判断した。 その上で裁判所は、被告人の反省態度や前科前歴がないことを考慮し、実刑ではなく執行猶予付きの判決が相当であるとした。また、賄賂として収受した遊興飲食の饗応は役務の提供であって没収することができないため、刑法197条の5後段に基づき、その価額に相当する金額を追徴した。警察官による捜査情報漏洩は捜査活動の実効性を根底から揺るがす行為であり、本判決は、関係者からの働きかけがあっても公務員としての職責を全うすべき旨を改めて示した事例といえる。