著作者人格権確認等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、広告代理店「大広」の元社員である控訴人Xが、スナック菓子「かっぱえびせん」のキャッチフレーズ「やめられない、とまらない」を創作したのは自分であると主張し、製造販売元であるカルビー株式会社を相手取って争った事案の控訴審である。 控訴人は、原審において、①昭和39年放送のテレビCMを自分が制作した事実の確認、②両者間の契約に基づき「控訴人がキャッチフレーズの創作者である」旨を記した記事(本件名誉回復記事)の被控訴人社内報及びホームページへの掲載、③被控訴人がテレビ番組及び新聞に控訴人を創作者と認めない趣旨の報道をさせたことは控訴人の名誉を毀損する不法行為にあたるとして7500万円の損害賠償、④控訴人を侮辱したとして7500万円の損害賠償を求めていた。 原審(東京地裁)は、①の事実確認請求については訴えの利益を欠くとして却下し、その余の請求をいずれも棄却した。控訴人は、②の記事掲載請求と③の名誉毀損に基づく損害賠償のうち100万円部分について控訴するとともに、当審において、⑤民法723条の名誉毀損による原状回復処分として本件名誉回復記事の掲載を求める請求を、従前の契約に基づく掲載請求と選択的に追加した。 【争点】 主たる争点は、テレビ番組の放送及び新聞記事の掲載について、被控訴人カルビーに名誉毀損の不法行為が成立するか(争点4)、及び追加請求として、本件名誉回復記事の掲載が名誉回復に適当な処分といえるか(争点7)である。 【判旨】 知財高裁は、控訴をいずれも棄却した。 まず、訴えの追加的変更については、損害賠償とともに名誉回復処分を求める趣旨であり請求の基礎に変更はなく、判断の前提事実も既に主張立証済みで訴訟手続を著しく遅滞させないとして、これを許容した。 名誉毀損の成否については、本件番組及び新聞記事の内容は、キャッチフレーズが被控訴人の会議の場で創作されたという趣旨であり、仮に創作者が控訴人であればこれを否定する評価となり得るとしつつも、報道行為の主体はテレビ局や新聞社であって被控訴人ではないと判示した。被控訴人が取材に応じて右趣旨の回答をしていたとしても、それだけで報道によって生じ得る名誉毀損の不法行為責任を被控訴人が直ちに負うものではないとした。 また、被控訴人が各メディアに特定趣旨の報道をさせた事実を認めるに足りる証拠はなく、取材当時、被控訴人は控訴人が創作者であることを客観的に示す証拠を有していたとは認められないから、被控訴人に対し、そのような報道をしないよう求めるべき注意義務を課すこともできないとした。 以上から、名誉権侵害に基づく損害賠償請求に理由はなく、当審で追加された原状回復としての記事掲載請求も、不法行為の成立が認められない以上、争点7を検討するまでもなく棄却すべきであると結論づけた。広告業界における歴史的キャッチフレーズの創作者を巡る長年の主張が、取材対応と報道主体の峻別という不法行為法の基本原則により退けられた事例である。