審決取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「二次元コード、ステルスコード、情報コードの読み取り装置及びステルスコードの読み取り装置」という名称の発明に係る特許権(本件特許)を有する原告らが、被告による無効審判請求を認めて本件特許を無効とした特許庁の審決の取消しを求めた事件である。 本件特許は、平成9年11月に出願され、平成19年2月に設定登録されたものであり、その請求項1は、「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され、この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード」というものである。すなわち、従来のモノクロ(白黒等の2色)のバーコードでは表示情報量に限界があったため、色(波長特性)の異なる3種以上の表示領域を二次元に並べ、その色の組合せで情報を表現することにより、表示情報量を飛躍的に増大させるという技術である。 これに対し被告は、本件特許出願以前に公開された引用例1(特開平5-233898号公報。携帯用光学式カードに赤・緑・黄の3色のマークと白色の4色を組み合わせたカルラコードを記録する技術)及び引用例2(特開平8-263580号公報。2×2のマトリクスに白・黒・赤の3色を割り当てる2次元コード技術)に基づき、本件発明は新規性を欠くと主張して無効審判請求をし、特許庁は平成30年3月、本件発明はいずれの引用発明にも該当し、特許法29条1項3号により特許を受けることができないとして本件特許を無効とする審決をした。原告らはこの審決を不服として本訴を提起した。 【争点】 本件発明と引用発明1及び引用発明2との間に、特許庁が看過した相違点があるか否かが争点である。原告らは、引用発明1について、(1)読取方式の直線性により1次元情報技術にとどまること、(2)カード上の情報は個々が孤立した0次元情報にすぎないこと、(3)反射型に特化されていること、(4)波長特性の「組合せ」が情報表示要素となっていないこと、(5)情報の記録方式(追記型と固定型)や読取方式(逐次型と一括認識型)が異なること、といった相違点があると主張した。引用発明2についても同様に0次元情報にすぎないと主張した。 【判旨】 知財高裁は、原告らの請求を棄却した。 裁判所はまず引用例1の記載内容を詳細に分析し、引用発明1における「単位領域」は赤・緑・黄・白の4色のいずれかをとり、2×2のマトリクスに配列された4つの単位領域の色の組合せによって4の4乗=256種類の情報を表現するものであると認定した。そのうえで、単位領域が二次元的な配列で並べられていることは明らかであり、読取装置が光学式カードを長手方向に間欠送りしつつ直交方向に走査する動作を要することからも、コード自体は二次元的に読み取られるべきものであるから、表示領域は二次元配列であると判断した。 原告らが主張した読取方式による次元性の変動については、本件発明の特許請求の範囲は読取手順や走査順序を発明特定事項としておらず、本件明細書にもそうした限定を示す記載はないとして退けた。また、反射型と放射型の区別も、本件請求項が「反射又は放射」と選択的に規定している以上、引用発明1が反射型に特化していることは相違点とならないとした。情報記録方式(追記型か固定型か)や読取方式(逐次型か一括型か)の違いも、本件請求項に何ら限定されていない事項にすぎず、相違点を構成しないと判示した。 結論として、本件発明と引用発明1とは「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され、この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード」である点で一致し、相違点は存在しないとして、取消事由1には理由がなく、取消事由2について判断するまでもなく原告らの請求は失当であるとした。本判決は、カラー二次元コードの新規性を争う場面において、請求項に記載のない読取方式や情報記録方式の違いは相違点として考慮されないことを明確にした事例として実務的意義を有する。