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行政

イラク戦争検証結果報告書不開示処分取消等請求事件

判決データ

事件番号
平成27行ウ429
事件名
イラク戦争検証結果報告書不開示処分取消等請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2018年11月20日

AI概要

【事案の概要】 本件は、アメリカ合衆国、英国等が2003年3月にイラクに対して行った武力行使(対イラク武力行使)を日本政府が支持するに至った意思決定過程について、外務省が省内で行った検証(本件検証)の結果をとりまとめた報告書(本件文書1)の開示を求めた情報公開請求をめぐる訴訟である。 イラクは1990年にクウェートに侵攻し、その後国連決議に基づく査察を一旦受け入れたものの、1998年頃以降は査察を拒否するようになった。2002年1月にブッシュ米大統領がイラクを「悪の枢軸」と名指しし、大量破壊兵器保有の疑いを理由に武力行使の可能性を示唆。2003年3月20日、米国・英国等は新たな安保理決議を経ることなく対イラク武力行使に踏み切り、小泉純一郎内閣総理大臣(当時)はこれを支持する旨を表明した。しかし、武力行使後の査察によってもイラクの大量破壊兵器隠匿の事実は確認されず、武力行使の前提が事後的に崩れるという重大な結果を招いた。 米国、英国、オランダ、オーストラリア等は、武力行使の意思決定過程や情報能力について詳細な検証報告書を公表したのに対し、日本では平成23年に前原誠司外務大臣(当時)の指示で外務省内の検証が開始され、平成24年12月に本件文書1がとりまとめられたが、公表されたのは「報告の主なポイント」という要約版のみで、本文は非公開とされた。 原告は平成27年1月、情報公開法に基づき本件文書1の全文開示を請求したが、外務大臣は同年4月、情報公開法5条3号(他国との信頼関係・交渉上の不利益)及び5号(政府内の率直な意見交換)に該当するとして一部を不開示とする処分をした。原告はその後の一部開示変更を経てもなお不開示部分が残る本件処分の取消しと、不開示部分の開示の義務付けを求めて本訴を提起した。 【争点】 主な争点は、情報公開法5条3号・5号・6号該当性の審査方法及び立証責任の所在、本件文書1の各不開示部分(情報収集先、インタビュー対象者の氏名・肩書、国際情勢の分析、日本の検討過程、武力行使支持の理由、国民への説明責任の検証等合計18か所に及ぶ部分)が各号所定の不開示事由に該当するか、である。原告は行政機関の恣意的運用を許さないために裁判所が独自に不利益発生の蓋然性を判断すべきと主張し、被告は行政機関の長の第一次的判断が尊重されるべきと主張した。 【判旨】 東京地裁は、情報公開法5条3号については、国の安全や他国との交渉に関する情報は高度の政策的判断を伴い、将来予測についての専門的・技術的判断を要する特殊性があることから、「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」との文言に照らし、行政機関の長の第一次的判断を尊重し、その判断が合理性を持つ限度内にあるか、すなわち重要な事実の基礎を欠くか社会通念上著しく妥当性を欠くかを審査する枠組みを採用した。もっとも被告側に一般的・類型的に不開示情報に当たることを推認させる事情の主張立証が必要とし、その上で原告が裁量権の逸脱濫用を基礎付ける具体的事実を主張立証すべきとした。5号・6号については原則どおり被告側に該当性の主張立証責任があるとした。 その上で本件各不開示部分について個別に検討し、情報収集先や高官氏名、インタビュー対象者の氏名・肩書、国際情勢の分析、日本政府内の検討過程、武力行使支持の具体的理由、情報収集・分析についての検証、国民への説明責任についての検証などのいずれについても、対イラク武力行使が国際政治上・安全保障政策上機微な問題であり、これらの情報が公になれば、他国が日本の情報収集能力や分析能力、関心事項等を推察し、将来類似の事案が発生した際に自国を利する形で効果的な外交活動を展開することが可能となるおそれがあるとして、外務大臣の不開示判断に裁量権の逸脱濫用は認められないと結論付けた。 原告は諸外国が詳細な検証報告書を公表していること、本件文書1の分量が僅か17頁程度で具体的記述は想定し難いこと、「報告の主なポイント」に既に記載されている内容と重複する部分については不開示理由がないこと、15年以上経過した事実で国際情勢も変化していること等を主張したが、裁判所は、諸外国の報告と本件文書1の内容が同一であることはうかがえないこと、情報の価値は分量のみでは左右されず他の情報との組合せで様々な価値を生み得ること、「報告の主なポイント」は新たに作成されたものであって本件文書1の抜粋ではないこと等を理由にいずれも採用しなかった。 結論として、本件各不開示部分はいずれも情報公開法5条3号又は5号・6号に該当し、本件処分は適法であるとして、開示の義務付けを求める訴えは併合提起された取消請求に理由がなく訴訟要件を満たさないため却下し、取消請求は棄却した。本判決は、安全保障・外交分野における情報公開請求に関して行政機関の長の広範な裁量を重ねて確認したものであり、政府の説明責任と機密保持の緊張関係を示す事例として実務的意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。