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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成29行ケ10196
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2018年11月21日
裁判官
大鷹一郎古河謙一関根澄子

AI概要

【事案の概要】 本件は、製薬会社である原告ら(メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション及びメルクシャープエンドドームリミテッド)が、2型糖尿病治療薬として有用なジペプチジルペプチダーゼ-IV(DP-IV)阻害剤の新規結晶形についての特許出願をめぐり、特許庁が進歩性を否定して拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求めた、審決取消訴訟(知的財産高等裁判所第4部)である。 問題となった発明は、(2R,3S,5R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-5-[2-(メチルスルホニル)-2,6-ジヒドロピロロ[3,4-c]ピラゾール-5(4H)-イル]テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(化合物P)の「形I」と呼ばれる結晶形であり、粉末X線回折パターンにおいて特定の位置に少なくとも4つのピークを有することを特徴とするものである。原告らは平成24年6月に出願したが、拒絶査定を受け、審判でも不成立となった。 特許庁は、化合物P自体を開示する国際公開公報(刊行物1)を引用し、医薬化合物を結晶化することには強い動機付けがあり、通常の試行錯誤で形Iの結晶質を得られるとして、進歩性を否定した。原告らは、刊行物1の実施例1の最終生成物は非晶質であり結晶の開示はないこと、形Iを選択する動機付けはないこと、本願発明の形Iは「13℃より上で最も安定な相」として存在する顕著な効果を有することなどを主張した。 【争点】 争点は、相違点(結晶形の特定の有無)の容易想到性と、本願発明の効果が予測可能な範囲を超えるかという「予想できない顕著な効果」の有無である。前者については、刊行物1の最終生成物が結晶か非晶質かという引用発明の認定、結晶多形探索の動機付けの存否、当業者が通常なし得る試行錯誤の範囲といった論点が含まれる。 【判旨】 裁判所は原告らの請求を棄却した。まず引用発明の認定について、刊行物1の実施例1で得られた「淡褐色の固体」は、再結晶により精製した「結晶性生成物」を洗浄して得たものであり、洗浄により非晶質になる証拠もないから、結晶(結晶質)と認めるのが相当であるとした。 次に、本願優先日当時の技術常識として、医薬品原薬の多くは結晶状態で製造され、結晶多形は安定性・溶解性・バイオアベイラビリティに影響することから結晶化条件の最適化及び結晶多形の探索が必要であること、結晶多形の分析にはX線粉末回折が通常用いられること、酢酸エチルは安全性が高く最も普通に使用される結晶化溶媒の一つであることを認定した。 その上で、当業者は引用発明の化合物Pについて、結晶化条件の最適化及び結晶多形の探索を行う動機付けがあり、室温を含む温度範囲で酢酸エチルを結晶化溶媒として用い、X線粉末回折で分析し、室温で安定な結晶を選ぶことは通常行うことであるから、形Iの結晶質の構成に至ることは当業者が容易に想到し得たと判断した。特定の結晶形を選択する動機付けが事前に必要となるわけではないとも判示した。 顕著な効果についても、形Iが「13℃より上で最も安定な相」として存在するという特性は室温を含む温度で安定であることを意味するにすぎず、吸湿性の低さも予測し得る範囲を超えるものではないとして、進歩性を否定した本件審決の判断に誤りはないとした。 本判決は、医薬品結晶形特許における進歩性判断について、結晶化・結晶多形探索の動機付けを広く認めた上で、特定結晶形の効果が通常の結晶多形から予測される範囲を超えるか否かを厳格に審査する実務傾向を示すものとして、医薬品特許実務において重要な意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。