損害賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ネ653
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2018年12月7日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 田川直之、安達玄、石丸将利
- 原審裁判所
- 大阪地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、第二次世界大戦中に朝鮮半島から広島に動員され、昭和20年8月6日の原子爆弾投下により被爆したAの承継人である控訴人ら(大韓民国在住の同国国民)が、国に対して国家賠償を求めた事案である。 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(原爆医療法)および原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(原爆特別措置法)は、被爆者の援護を定めた法律である。ところが、厚生省公衆衛生局長は、昭和49年7月22日付の「402号通達」により、被爆者健康手帳の交付を受けた者が我が国の領域を越えて居住地を移した場合には原爆二法が適用されず、健康管理手当等の受給権は失権の取扱いとなると定めた。その後、原爆二法を統合する被爆者援護法(原爆三法)が制定された後も、国は平成15年3月まで402号通達に従った取扱いを継続した。 控訴人らは、こうした失権取扱いの継続によりAの原爆三法上の「被爆者」としての法的地位ないし権利が違法に侵害されたと主張し、国家賠償法1条1項に基づき、各17万1428円及び違法行為終了日である平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。原審が請求を棄却したため、控訴人らが控訴した。 【争点】 本件の中心的な争点は、Aの損害賠償請求権について民法724条後段の除斥期間(20年)の適用を制限すべきか否かである。控訴人らは、402号通達の定めが廃止されるまでは権利行使が著しく困難または客観的に不可能であり、除斥期間の適用は著しく正義・公平に反するなどと主張した。 【判旨】 本判決は、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決を維持し、控訴を棄却した。 すなわち、平成15年3月1日の厚労省健康局長通知により402号通達の失権取扱いの定めが廃止された時点では、Aに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の除斥期間(平成17年11月30日まで)は経過しておらず、除斥期間満了までに2年半以上の期間が残されていた。また、上記通知を受けて平成15年3月から5月にかけて約1000人もの在韓被爆者が来日し、被爆者健康手帳の交付を受けていない在外被爆者からの仮申請が殺到したという事情も認められる。こうした事情からすれば、その頃にはAの相続人において402号通達の失権取扱いの定めが廃止されたことを知り得る状態にあり、除斥期間内に損害賠償請求訴訟を提起することは客観的に可能であったといわざるを得ない。したがって、本件において民法724条後段の規定を適用することが著しく正義・公平に反することになるとはいえないと判断した。 在外被爆者をめぐる援護行政の違法性と除斥期間の関係について、高裁レベルで判断を示した事案として実務的意義を有する。