遺族厚生年金不支給処分取消等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、遺族厚生年金及び未支給年金等の不支給処分の取消しを求めた行政訴訟の控訴審である。控訴人は、老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給権者であった亡Bの配偶者であり、亡Bの死亡後、厚生労働大臣に対し、厚生年金保険法等に基づき遺族厚生年金の裁定並びに亡Bの老齢基礎年金に係る未支給年金及び老齢厚生年金に係る未支給保険給付の支給を請求した。しかし、厚生労働大臣は、控訴人と亡Bとの間に「生計同一関係」が認められないとして、いずれも不支給とする各処分を行った。 控訴人と亡Bは、韓国の旧家出身で男尊女卑の思想が強い夫と、それに従ってきた妻として約23年間婚姻関係にあったが、晩年の1、2年間、控訴人は亡Bから激しい身体的・精神的・性的暴力(DV)を受けるようになり、生命の危険を感じて緊急避難的に別居し、その後6年余り引きこもり状態で生活していた。亡Bの死亡時点で控訴人と亡Bは別居状態にあり、音信も途絶え、経済的援助もない状態が長期間継続していた。また、控訴人は生活保護受給の過程で自治体職員の指導により外国人登録上の住所を変更していた。原審大阪地方裁判所は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 厚生年金保険法等に基づく遺族厚生年金等の支給要件である「生計同一関係」について、DV被害により別居した配偶者が、死亡当時、被保険者と消費生活上の家計を一つにしていたと評価できない場合でも、DV防止法の趣旨や離婚時年金分割制度との整合性を考慮して例外条項を適用できるか、また、自治体職員の住所変更指導が違法であり、厚生労働大臣が受給資格喪失を回避すべき信義則上の義務を負うかが争われた。 【判旨】 大阪高裁は、控訴を棄却した。生計同一関係が認められるためには、被保険者死亡当時、配偶者が被保険者と消費生活上の家計を一つにしていると認められる状況にあったことを要するところ、例外条項は個別具体的事情に基づきこれに準じる状況と評価できる場合に生計同一関係を認める趣旨である。控訴人がDVから逃れて別居した経緯を考慮しても、死亡当時、控訴人と亡Bが家計を一つにしていたとは認められず、例外条項の適用はできないとした。離婚時年金分割制度と遺族厚生年金制度は趣旨目的を異にし、適用対象となる配偶者の範囲が異なるのはやむを得ず、一時的別居を超えて家計を異にする状態が長期間継続し固定化している場合にまで生計同一関係を認めることは困難であると判示した。また、自治体職員が外国人登録上の住所変更により遺族厚生年金受給資格を失う恐れを説明すべき法律上又は信義則上の義務を負うとは解し難く、厚生労働大臣が生活実態に反して同一世帯と認めなければならない理由もないとして、控訴人の主張を排斥した。