旧取締役に対する損害賠償,詐害行為取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30受44
- 事件名
- 旧取締役に対する損害賠償,詐害行為取消請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判年月日
- 2018年12月14日
- 裁判種別・結果
- 判決・棄却
- 裁判官
- 菅野博之、鬼丸かおる、山本庸幸
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、Aに対して約37億6000万円の損害賠償債権を有する被上告人が、Aの行った財産処分行為について詐害行為取消権を行使した事案である。具体的には、Aが上告人Y1から株式を代金1億6250万円で購入する旨の契約と、Aが上告人Y2に1億2000万円を贈与する旨の契約について、それぞれ取消しを求めるとともに、受益者である上告人らに対して受領済みの金員相当額の返還と、訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めた。 詐害行為取消権は、民法に定められた制度で、債務者が債権者を害することを知ってした財産処分行為を取り消し、逸出した財産を債務者の責任財産に回復させることを目的とする。本件では、受益者が返還すべき金員について、いつから遅延損害金が発生するのかが問題となった。 【争点】 詐害行為取消しにより受益者が取消債権者に対して負う受領済みの金員相当額の支払債務(受領金支払債務)について、①詐害行為取消判決の確定によって初めて発生するのか、それとも受領時に遡って発生するのか、②履行遅滞に陥る時期はいつかが争点となった。 上告人らは、受領金支払債務は詐害行為取消判決の確定により初めて生ずるものであるから、判決確定前に履行遅滞に陥ることはなく、訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を命じた原審には法令解釈の誤りがあると主張した。 【判旨】 上告棄却。 最高裁は、まず詐害行為取消しの効果は詐害行為取消判決の確定により生ずるものであるとしつつ、その効果が将来に向かってのみ生ずるのか、過去に遡って生ずるのかは、詐害行為取消制度の趣旨等を考慮して判断すべきとした。 そのうえで、詐害行為取消権は、詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として受益者等に財産回復義務を生じさせるものであるから、詐害行為取消しの効果は過去に遡って生ずると解するのが制度の趣旨に沿うと判示した。また、受領金支払債務が判決確定前に遡って生じないとすれば、受益者は受領済みの金員についてそれまでの運用利益の全部を得ることとなり相当ではないと指摘した。 したがって、受領金支払債務は、詐害行為取消判決の確定により受領時に遡って生ずるものと解すべきであるとした。もっとも、この債務は期限の定めのない債務であり、発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、詐害行為取消判決の確定より前にされた履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるとして、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると結論づけた。 本件では、被上告人が訴状をもって取消しと金員支払を請求したのであるから、遅延損害金の起算日は訴状送達の日の翌日となるとして、原審の判断を是認した。本判決は、詐害行為取消訴訟における受領金支払債務の発生時期と遅延損害金の起算日について最高裁が初めて明示的に判断を示したものであり、実務上重要な意義を有する。