障害基礎年金不支給処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、知的障害(中度精神発達遅滞、IQ49、療育手帳B判定所持)を有する男性であり、平成5年生まれの二卵性双生児として早産・仮死状態で出生した。1歳半健診で発達の遅れを指摘されて以降、療育を受けながら育ち、小学校では情緒障害児学級、中学校では特別支援学級に在籍し、通信制高校サポート校を経て、平成25年4月から特例子会社(障害者の雇用の促進等に関する法律44条1項に基づき親会社の一事業所とみなされる子会社)に障害者雇用枠で採用され、清掃業務等に従事していた。 原告は、20歳に達した日の状態で国民年金法30条の4第1項所定の20歳前の傷病による障害基礎年金の支給要件を充たすとして裁定請求をしたが、厚生労働大臣は平成26年1月17日、20歳到達日における原告の障害の状態が国民年金法施行令別表の障害等級2級に該当しないとして不支給処分を行った。審査請求・再審査請求もいずれも棄却されたため、原告は本件処分の取消しを求めて出訴した。 20歳前の傷病による障害基礎年金は、保険料の拠出要件が免除される福祉的性格の強い年金であり、知的障害のように発達期に障害が生じた者にとって生活基盤となる重要な制度である。障害の程度の認定は、厚生労働省の障害認定基準に沿って、知能指数のみならず日常生活における援助の必要度を勘案して総合的に判断される。 【争点】 本件基準日(原告が20歳に達した日)における原告の障害の状態が、国民年金法施行令別表の障害等級2級に該当する程度のもの(知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要で、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの)であるか否かが争点となった。特に、特例子会社での就労継続(月20日程度、月7〜9万円の収入)という事情が、日常生活能力の向上を示し障害等級2級非該当の根拠となるかが問題とされた。 【判旨】 東京地裁は、本件処分を取り消した。 裁判所は、障害認定基準は法的拘束力を有しないものの合理的なものであり、知的障害の認定に当たっては知能指数のみに着眼せず日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断すべきであるとした。特に、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したと捉えず、仕事の種類・内容・就労状況・職場で受けている援助の内容等を十分確認した上で判断すべきであると判示した。 その上で、原告の日常生活能力について、適切な食事摂取・身辺の清潔保持・他人との意思伝達・社会性はいずれも「助言や指導があればできる」レベルにとどまり、金銭管理・通院と服薬・身辺の安全保持については「助言や指導をしてもできない」レベルに該当すると認定した。原告の就労は、障害者対応の専門知識を有する社員から手厚い援助・配慮を受けた上での単純作業(書類封入、掃き掃除等)にとどまり、通勤経路も原告母と何度も練習した結果として辛うじて単独通勤が可能になったにすぎないと評価した。 したがって、原告が特例子会社で継続的に就労していたことは社会的適応性の向上を示すものではなく、原告の障害の程度は障害等級2級に該当するか、これと同等程度のものであったというべきであり、これを否定した本件処分は違法であると結論付けた。