請求異議事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29オ1725
- 事件名
- 請求異議事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2018年12月18日
- 裁判種別・結果
- 決定・その他
- 裁判官
- 岡部喜代子、山崎敏充、戸倉三郎、林景一、宮崎裕子
AI概要
【事案の概要】 本件は、請求異議事件の上告審において、上告裁判所である高松高等裁判所が、民事訴訟法324条に基づき事件を最高裁判所に移送する旨の決定をしたため、最高裁がその移送決定の当否を判断した事案である。 民事訴訟法324条は、上告裁判所である高等裁判所は、最高裁判所規則で定める事由があるときは、事件を最高裁判所に移送しなければならないと定めている。そして、民事訴訟規則203条は、法令等の解釈について当該高等裁判所の意見が最高裁判所等の判例と相反するときに、その事由があると規定している。これは、高裁が最高裁判例と異なる解釈で判決してしまうと法令解釈の不統一が生じるため、事件を最高裁に移送させて解釈の統一を図る仕組みである。 本件で高松高裁は、債権執行の申立てをした債権者が、当該手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に申立てを取り下げた場合、その差押えによる時効中断の効力は民法154条により初めから生じなかったことになると解するのは相当でないとの意見を示した。そして、この意見は、担保不動産競売の申立てが取り下げられた場合に関する最高裁平成11年9月9日第一小法廷判決(裁判集民事193号685頁)と相反するとして、本件を最高裁に移送する決定をした。 【争点】 第一に、民事訴訟法22条1項が「確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する。」と定めるところ、民訴法324条に基づく高裁の移送決定について、最高裁が当該移送事由の有無を再判断し、これを取り消すことができるかが問題となった。第二に、本件高裁の意見が実質的に平成11年判決と相反するといえるかが問題となった。 【判旨】 最高裁は、民訴法22条1項の趣旨は主として第一審裁判所間で移送が繰り返されることによる審理遅延等を防止することにあるから、民訴法324条に基づく高裁の移送決定は同項にいう「移送の裁判」に含まれないと解した。そのうえで、民訴規則203条の趣旨が法令解釈の統一にあることに照らせば、同条所定の事由の有無について高裁と最高裁の判断が異なる場合には最高裁の判断が優先し、最高裁は、事由がないと認めるときは当該移送決定を取り消すことができると判示した。 本件についてみると、平成11年判決は、担保不動産競売の申立債権者が請求債権の一部又は全部の満足を得ることなく申立てを取り下げた場合に関する判断であり、配当等により一部について満足を得た後に取り下げた場合に関する本件意見とは前提を異にしている。したがって、本件意見は平成11年判決と相反するものではなく、民訴規則203条所定の事由は存しないとして、全員一致で本件移送決定を取り消した。 本決定は、高裁から最高裁への移送決定に対する最高裁のコントロール権限を明らかにした実務上重要な判断である。