特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、薬剤分包用ロールペーパに関する特許権(特許第4194737号、発明の名称「薬剤分包用ロールペーパ」)を有していた原告(株式会社湯山製作所)が、被告ら3社(日進医療器、セイエー、OHU)に対し、被告らが製造・販売する薬剤分包用ロールペーパが原告の特許権を侵害すると主張し、特許法102条2項及び民法709条に基づき約999万円の損害賠償を請求した事案である。 本件特許発明は、薬剤を分包するロールペーパの巻量変化によるシート張力の変動を解消し、耳ずれや裂傷を生じさせず薬剤を分包することを可能とする技術であって、ロールペーパに磁石を配置し、支持軸に設けた角度センサでその回転角度を検出する構成を特徴とする。被告らが販売していた被告製品は、プラスチック製の筒部にグラシン紙等の薬剤分包用シートを巻き回したものであり、購入者が原告製の薬剤分包装置で使用済みとなった中空芯管(磁石が配設されたもの)に輪ゴムを介して被告製品を装着することで、一体化製品として原告製分包装置に使用できるという構造であった。被告らは、この「使用済み分包機メーカー製芯管」を再利用する装着方法をイメージ図付きで説明した資料を調剤薬局等に配布し、被告日進は自社ウェブサイトでも同様の案内を行っていた。 【争点】 本件の主要な争点は、(1)一体化製品が本件発明の技術的範囲に属するか(特に、ロールペーパに係るサブコンビネーション発明において、構成要件Aに記載された薬剤分包装置に「用いられ」との文言をどう解釈するか)、(2)被告製品の生産・譲渡が特許法101条1号の間接侵害(いわゆる「のみ品」による侵害)に当たるか、(3)本件特許が特許無効審判により無効とされるべきものか(明確性・サポート要件違反、新規事項追加、進歩性欠如)、(4)損害額の算定である。 【判旨】 大阪地裁は、原告の請求を一部認容した。 まず技術的範囲について、本件発明は「薬剤分包用ロールペーパ」という物の発明であり、構成要件Aの薬剤分包装置に係る特定は、ロールペーパ等が「用いられ」るという前提でロールペーパ等の構造・機能を特定するものとして把握すべきものであって、ロールペーパ等の用途又は用法を定めたものと解すべきではないと判示した。したがって、構成要件Aを充足する薬剤分包装置に使用可能な構成を備え、その他の構成要件をも充足するロールペーパが生産・譲渡された時点で特許権侵害が成立し、当該ロールペーパが実際に構成要件Aを充足する分包装置に使用されるか否かは侵害成立を左右しないとした。これを前提に、一体化製品は本件発明の技術的範囲に属すると認定した。 次に間接侵害の成否について、被告製品は原告製使用済み芯管と一体化して原告製薬剤分包装置で使用されることを前提に生産され、被告日進のウェブサイトや配布資料でもそのような使用方法が案内されていたこと、被告日進製の薬剤分包装置への装着は紛争顕在化後にわずか2台販売されたにとどまること、エルク製やウエダ製の他社分包装置に装着することは相当の困難と無駄を伴い経済的合理性がないこと等を認定し、被告製品には原告製薬剤分包装置で使用する以外の実質的用途は存在しないとして、特許法101条1号の間接侵害(「のみ品」該当性)を肯定した。 無効の抗弁については、本件訂正により角度センサの位置が支持軸の片端と明確となっており明確性・サポート要件違反は認められず、乙22発明(残量警示のための磁気検知)や乙23´発明(磁力結合による制動機構)からは、本件発明の課題・構成に容易に想到できないとして、進歩性欠如も否定した。 損害額については、特許法102条2項により被告らの得た利益額を基礎として、被告日進に約97万円、被告OHUに約48万円、被告セイエーに約24万円の賠償責任を認め、被告らは重なり合う範囲で不真正連帯債務を負うとした。