AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が、当時4歳の養子である被害者を、テレビ台の引き出しの中に入れたまま押し込めて身動きのとれない状態に置き、低酸素脳症により死亡させたという逮捕監禁致死の事案である。 被告人は、前妻との間の長女(5歳)・長男(4歳)、平成30年に結婚した妻A、Aの連れ子で被告人とも養子縁組した被害者(当時4歳)、3歳の女児とともに、北九州市内の祖母方で暮らしていた。平成30年5月11日午前0時過ぎ頃、被告人が2階寝室で妻と過ごしていたところ、子供部屋から子供の泣き声が聞こえたため様子を見に行くと、子供部屋のテレビ台中央に設けられた引き出し(横幅約53.8cm、奥行約34cm、高さ約13.5cm)が引き出され、その中で被害者が手足を折り曲げ身体を丸めて寝入っていた。被告人は被害者をベッドに移そうと声をかけたり尻を叩いたりしたが目を覚まさなかったことから苛立ちを覚え、被害者が寝込んだままの引き出しをテレビ台の中に押し込み、同日未明までの数時間、被害者を狭隘な空間に閉じ込めて脱出不可能な状態に置いた。その結果、被害者は胸郭運動障害による低酸素脳症により死亡した。 【争点】 主たる争点は、逮捕監禁の故意の有無である。弁護人は、被告人には逮捕監禁の故意がなかったとして無罪を主張した。被告人自身も、被害者が2段ベッド下の引き出しから自力で出入りしていたのを見たことがあったため、テレビ台の引き出しからも出られると考えていたのではないかと供述した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人が数か月前から被害者と同居し入浴の世話もしていたため体格を把握していたこと、引き出しの中で被害者が寝入っている状況を目の当たりにしていたこと、引き出しを押し込む際には相応の力を要したため逆向きの力で自力脱出することが困難であることも容易に推測できたことを指摘し、被告人には被害者がテレビ台から脱出不可能であるとの認識があったと認定した。2段ベッド下の引き出しは寸法がより大きくキャスター付きで構造が異なることから、そこから出入りしていたのを根拠にテレビ台からも出られると考えたとする被告人供述は信用できないとし、逮捕監禁の故意を認めた。 量刑については、被告人が日頃被害者に暴力を振るっていたわけではないものの、狭い引き出しに幼い被害者が収まっているのを認識しながら押し込んで数時間放置し、無用の苦しみを与え続けた行為態様は危険かつ悪質で残酷であり、朝まで様子を気遣うこともなかった点は軽率・無思慮で、幼児を死亡させた結果は特に強く非難されるとした。他方、日頃の世話状況、寝入った被害者を気遣ったことが苛立ちの端緒であったこと、妻が再出発を望んでいること、被告人が自己の行為を後悔・反省していることなどの酌量すべき事情を考慮し、酌量減軽の上、懲役2年6月(求刑懲役5年、執行猶予なし、未決勾留日数中80日算入)に処した。