AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が、B及びAと共謀の上、営利の目的で被害者(当時29歳の女性)を略取し、約10時間にわたって車中で逮捕監禁したという営利略取、逮捕監禁の事案である。平成30年5月26日夕刻、浜松市内のパチンコ店北側駐車場において、被害者がスポーツジムから出て自己の駐車車両の運転席に乗り込んだところ、Aが助手席から、被告人が運転席から乗り込み、被害者を押さえ込むなどして支配下に置き、そのまま自動車を発進させた。被告人らは、浜松市から掛川市、静岡市等を経て浜松市内まで車を走らせ、その間、被害者の両手首を結束バンドで拘束するなどして脱出困難な状態に置いた。 本件は、インターネットの匿名掲示板におけるBの呼びかけに応じ、それまで面識のなかった被告人らが偽名を名乗り合いながら集結した犯行であり、結束バンド、変装用のかつら、帽子、軍手、複数の服装を事前に準備し、別の駐車場で予行演習まで行うなど、周到に計画されたものであった。被告人は、Bから「人さらい」の仕事と告げられ、報酬目的で運転手役を引き受けた。被害者は同年6月9日に山中で遺体として発見されたが、被害者死亡の事実は本件の訴因には含まれていない。首謀者とみられるBは捜査機関に逮捕される前に死亡し、被告人とAは自ら犯行を打ち明け、あるいは警察署に出頭した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役4年に処し、未決勾留日数中120日を算入した(求刑は懲役7年)。 量刑判断にあたり、裁判所はまず犯行全体の悪質性について、匿名掲示板を介した追跡困難な匿名性の高い犯行であり、役割分担の謀議や用具の準備、予行演習を行った計画性の高い犯行であると指摘した。縁もゆかりもない若い女性を標的にした無差別的犯行であり、社会に与えた不安感等の悪影響は極めて大きく、被害者には落ち度も誘因となる不注意も全く認められないと評価した。被害者が「助けて」「殺さないで」と必死に抵抗したにもかかわらず結束バンドで拘束され、約10時間にわたり一度も車外に出ることなく屈辱的な姿態を撮影されるなど、態様は誠に悪質であり、被害者の肉体的・精神的苦痛は極めて重大で、遺族の峻烈な処罰感情も至極当然であるとした。犯行後も衣服や被害者の荷物を投棄して証拠隠滅を図っており、事後情状も芳しくないとされた。 被告人固有の事情としては、運転手役という犯行に不可欠の役割を担い、報酬目的で加担したものであって犯意は強固で動機に酌量の余地はないとしつつ、長時間の監禁中に漫然とAと運転を交代して離脱した経緯は身勝手かつ無責任であるとした。他方、被告人は犯行の首謀者ではなく犯行を主導したわけでもないこと、自ら進んで捜査機関に犯行を打ち明けその後も反省の態度を示していることを踏まえ、検察官の求刑は従前の同種事案の量刑傾向からすると重きに過ぎるとして、主文の刑期が相当であると判断した。