詐欺未遂,強盗殺人,死体遺棄被告事件
判決データ
- 事件番号
- 平成28あ543
- 事件名
- 詐欺未遂,強盗殺人,死体遺棄被告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判年月日
- 2018年12月21日
- 裁判種別・結果
- 判決・棄却
- 裁判官
- 鬼丸かおる、山本庸幸、菅野博之
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が、親交のあった資産家夫妻を殺害し、その所持品を強奪した上、死体を土中に埋めて遺棄し、さらに強奪したクレジットカードを不正に使用して約381万円相当の新幹線回数券50冊をだまし取ろうとしたが未遂に終わった、という強盗殺人、死体遺棄、詐欺未遂の事案である。 量刑判断の中心となる強盗殺人の犯行態様は極めて悪質かつ計画的であった。被告人は、クレジットカード等を強奪する目的で、親交のあった夫妻を巧みに誘い出し、自動車内で多量の睡眠薬を服用させて睡眠状態に陥らせた上、夫妻の首にそれぞれロープを掛け、自動車の後部ドア枠上部に引っ掛けたフックにロープを通し、これを引っ張って夫妻を絞殺するという手段を用いている。被告人は、犯行に先立って、殺害に用いる自動車、睡眠薬、ロープ、フック等を周到に準備したほか、死体を埋めるための土地を購入して穴を掘るなど、綿密な計画のもとに犯行を実行している。 第一審は被告人に死刑を言い渡し、控訴審もこれを維持したため、弁護人が憲法36条違反(死刑制度が残虐な刑罰にあたる)、判例違反、事実誤認、量刑不当などを理由に上告した。 【争点】 上告趣意のうち、憲法36条違反を主張する点については、死刑制度そのものが憲法に違反しないかが形式的な争点とされた。また、実質的には、被告人の罪責の重大性と、被告人のために酌むべき事情(死体遺棄及び詐欺未遂事実の自認、前科のないこと等)を考慮しても、なお死刑を選択するのが相当かという量刑判断の当否が問題となった。 【判旨(量刑)】 最高裁判所第二小法廷は、裁判官全員一致の意見で本件上告を棄却した。 まず、死刑制度が憲法36条に違反しないことは、昭和23年大法廷判決をはじめとする確立した判例の示すところであるとし、憲法違反の主張には理由がないとした。その余の上告趣意は、判例違反をいう点を含めて、実質は事実誤認、量刑不当の主張にすぎず、刑訴法405条所定の上告理由に該当しないとした。 その上で、職権調査の結果として、本件強盗殺人は、クレジットカード等を強奪する目的のもとに、親交を装って夫妻を誘い出し、睡眠薬で抵抗不能にした上で絞殺するという手口で、土地購入や道具の事前準備も行われた「周到に準備された高度に計画的な犯行」であり、被告人の殺意も強固であると認定した。何ら落ち度のない被害者2名の生命が奪われた結果は重大であり、遺族が峻烈な処罰感情を示しているのも当然であるとした。 以上の事情に照らすと、被告人の刑事責任は極めて重く、死体遺棄及び詐欺未遂の事実を認めていることや前科がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第一審の死刑判決はやむを得ないものとして是認せざるを得ないと判断し、刑訴法411条を適用すべきものとは認められないとして、上告を棄却した。 本判決は、金銭目的で親交のある者を計画的に殺害した事案につき、被害者2名の強盗殺人であっても周到な計画性と強固な殺意に照らし死刑選択が是認された事例として、いわゆる永山基準下での死刑適用の実務を示すものである。