特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、特許権者と通常実施権者との間で締結された実施許諾契約をめぐり、日米にまたがる三者間で展開された特許紛争である。控訴人(日本の機械メーカー)は、被控訴人(米国法人である特許権者)との間で、樹脂フィルムの製造方法及び製造装置に関する日本特許権及び米国特許権について、独占的通常実施権の許諾を受ける実施許諾契約を締結していた。控訴人はこの契約に基づき本件各機械装置を製造し、これを控訴人補助参加人に販売し、控訴人補助参加人は当該機械装置を使用して樹脂フィルム製品を製造販売した。 その後、被控訴人は米国において、控訴人補助参加人に対し、当該製品の製造販売行為が本件米国特許権を侵害するとして損害賠償請求訴訟(別件米国訴訟)を提起し、第一審では控訴人補助参加人に損害賠償を命ずる判決が言い渡された。控訴人は、補助参加人との間で特許権行使による損害を全額補償する旨合意していたため、補償義務を負う可能性が高い状況となっていた。 そこで控訴人は被控訴人に対し、①控訴人及び控訴人補助参加人に対する本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求権の不存在の確認、②控訴人が本件実施許諾契約に基づき控訴人補助参加人に本件各機械装置を使用させることができる地位にあることの確認を求めて本訴を提起した。原審(東京地裁)は確認の利益がないとして訴えを却下したため、控訴人補助参加人が控訴した。なお、本件各特許権はいずれも平成22年までに存続期間の満了により消滅している。 【争点】 確認訴訟の適法要件である確認の利益の有無が争点となった。具体的には、(1)被控訴人が控訴人に対して損害賠償請求権を有しないことの確認の利益、(2)被控訴人が第三者である控訴人補助参加人に対して損害賠償請求権を有しないことの確認の利益(他人間の権利法律関係の確認の適否)、(3)控訴人が補助参加人に対して機械装置を使用させることができる地位にあることの確認の利益(過去の法律関係の確認の適否)が問題となった。 【判旨】 知財高裁は、争点(1)及び(2)については確認の利益を認め、争点(3)についてはこれを否定した。 争点(1)について、被控訴人が当審口頭弁論期日において控訴人に対する損害賠償請求権を有する旨陳述しており、両者の間に請求権の存否について現実の争いが存在する以上、被控訴人が権利行使しない旨を表明していても法的義務を負うものではないから、即時確定の利益が認められるとした。 争点(2)については、被控訴人と第三者(控訴人補助参加人)との間の権利法律関係の確認という特殊な形態であるが、本件通常実施権を有する控訴人による機械装置の販売により、補助参加人の使用等に本件各特許権の効力が及ばないことの確認は、控訴人自身が補助参加人に対する補償義務を負う可能性が高い状況下で、控訴人の被控訴人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権の存否を導く前提として必要な判断を含むものであり、控訴人の地位の不安除去のため有効適切であると判断した。 争点(3)については、特許権が既に消滅している以上、消滅後の地位確認は即時確定の利益を欠き、また消滅日までの過去の法律関係の確認については、前記(1)(2)の確認請求により同様の目的を達成できるため、確認対象として適切ではないとした。さらに、当該地位が確認されても、補助参加人による製品の製造販売行為が特許権侵害に当たらないことまでは確認されず、紛争の抜本的解決には至らないと指摘した。 結論として、原判決のうち訴え却下部分のうち争点(1)(2)に係る部分を取り消して東京地裁に差し戻し、その余の控訴は棄却した。