都道府県を選択して、裁判官を探すことができます

全国 2522 人の裁判官3141 件の口コミ
知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成30行ケ10022
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2018年12月26日
裁判官
森義之佐野信熊谷大輔

AI概要

【事案の概要】 本件は、タイヤメーカーである原告が、「トレッドが高トランス含量を有するエマルジョンSBRを含むタイヤ」と題する発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受け、これに対する不服審判請求も「成り立たない」との審決を受けたため、同審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 本願発明は、タイヤのトレッド(路面と接する部分)に用いるゴム組成物に関するもので、主要な成分として、(1)第1のジエンエラストマーとしてトランス-1,4-ブタジエニル単位の含量が50質量パーセントを超えるエマルジョンスチレン/ブタジエンコポリマー(E-SBR)を50から100phr、(2)105から145phrのシリカ、(3)Tgが20℃より高い炭化水素樹脂と、20℃で液体かつTgが-20℃より低い可塑剤からなる可塑化系を含むことを特徴とする。タイヤ設計においては、転がり抵抗の低減、耐摩耗性、ウェットグリップ性能は相互にトレードオフの関係に立ちやすく、これらを同時に改善することが継続的な技術課題とされてきた。 特許庁は、刊行物1(特表2004-518806号公報)に記載された発明(刊行物1発明)を引用し、本願発明との相違点はいずれも当業者が容易に想到し得るとして特許法29条2項により特許を受けることができないと判断した。これに対し原告は、刊行物1にはE-SBRとシリカの組合せが開示されておらず、かつ高用量(105から145phr)のシリカの使用も記載されていないから、刊行物1発明の認定およびこれを前提とする相違点の認定に誤りがあると主張した。 【争点】 刊行物1に、本願発明におけるE-SBRと高用量(105から145phr)のシリカとを組み合わせる構成が開示されているといえるか、すなわち本件審決による刊行物1発明の認定に誤りがあるか。 【判旨】 知財高裁第2部は、原告の請求を棄却した。 まず、刊行物1の特許請求の範囲の請求項1、同項を引用する請求項5、7、14の記載内容を踏まえると、タイヤトレッド用ゴム組成物として、E-SBR(エマルジョンで調製されたスチレン-ブタジエンコポリマー)と強化白色充填剤との組合せが明記されており、段落【0009】で強化白色充填剤として好ましいものは「シリカ(SiO2)」であると記載されているから、刊行物1にはE-SBRとシリカの組合せが明確に記載されていると認定した。実施例に当該組合せが具体的に示されていないとしても、当業者は特許請求の範囲および明細書の記載全体から当該組合せを認識できるとした。 また原告は、シリカがゴムとの親和性に乏しくS-SBRとの組合せが専ら用いられてきたこと、甲20ないし甲23の各文献によればE-SBRとシリカの組合せは耐摩耗性を悪化させることが知られていたことから、刊行物1に接した当業者にはE-SBRとシリカの組合せを採用することに阻害事由があると主張した。しかし判決は、刊行物1発明の課題解決手段は特定範囲のTgを有する複数のジエンエラストマーのブレンドに特定範囲のTgを有する樹脂を添加することにあり、当該手段を採用することによって耐摩耗性の低下を克服し得ると当業者は認識するから、阻害事由とはならないと判断した。 シリカの用量についても、刊行物1段落【0007】に強化充填剤を「50から150phrの変動量で組成物中に存在」させることが記載されており、この範囲内に本願発明の「105から145phr」が包含されている。加えて、本件明細書には当該数値範囲に限定したことの技術的意義(下限値の臨界性)が具体的に示されておらず、実施例でもシリカ100phrのC.6の方がシリカ120phrのC.7より濡れた路面に対するブレーキング性能および転がり抵抗の総合で優れている結果が見られることから、本願発明は単に当該数値範囲のシリカを含有するものを意味するにすぎず、上記用量を含む範囲が開示されていれば開示ありと認められるとした。 以上から、刊行物1発明の認定および本願発明との相違点の認定にいずれも誤りはなく、本願発明は当業者が刊行物1発明および周知の技術事項に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項により特許を受けることができないとした本件審決は結論において正当であるとして、原告主張の取消事由には理由がないと結論付けた。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。