商標権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、デンマークの照明器具メーカーである原告が、被告によるペンダントライト(吊り下げ型照明)の販売が原告の立体商標権を侵害するとして、商品の譲渡等の差止め、廃棄、及び損害賠償を求めた事案である。原告は、デザイナーのポール・ヘニングセンが昭和33年にデザインした「PH5」と称されるランプシェードの立体形状について、平成25年12月に商標出願し、平成28年2月に登録を受けていた。このランプシェードは、トップカバー、直径比30:50:21:11の4枚の円形シェード、リフレクター、ボトムカバー及び3本のパイプ状フレームから構成される特徴的な形状を有する。一方、被告は、意匠権等が消滅したデザインを用いた照明器具(いわゆるリジェネリック・リプロダクト品)として、原告商品と酷似する形状のペンダントライトを中国から輸入し、ウェブサイトを通じて販売していた。 【争点】 主な争点は、原告商標と被告標章の同一性、指定商品である「ランプシェード」と被告商品(照明用器具)の類否、原告商標の無効理由の有無(商標法3条1項3号・同条2項の自他商品識別力、4条1項7号の公序良俗、同項18号の機能確保に不可欠な形状該当性)、損害額、及び権利濫用の成否である。特に、商品の形状のみからなる立体商標について、使用による自他商品識別力の獲得(3条2項)が認められるかが中心的争点となった。 【判旨】 東京地裁は、原告商標と被告標章は外観が同一で観念・称呼でも区別されず同一と認めた上、ランプシェードと照明用器具は販売場所・需要者が重なり商品としての関連性が極めて強く類似すると判断した。自他商品識別力については、原告商品が昭和51年頃から日本で約40年間継続販売され、平成11年から平成26年までに7万4627台が販売されたこと、多数のカタログ・出版物・教科書に掲載され、グッド・デザイン賞を受賞していることなどから、原告標章は特徴的な形状として需要者に広く認識されており、3条2項の自他商品識別力を有すると認定した。4条1項7号・18号該当性もいずれも否定し、ロングセラー商品のブランド価値を守るための商標登録は不当でないとした。損害額については、商標法38条2項に基づき、登録日以降の販売数449個、売上額930万0586円から経費(1台当たり1万2000円)を控除した391万2586円と弁護士費用50万円の合計441万2586円を認容し、権利濫用の主張も退けた。本判決は、著名な工業デザインのロングセラー商品について立体商標による保護を認め、リプロダクト品に対する差止め及び損害賠償を認容した実務上重要な事例である。