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知財

特許権侵害損害賠償請求事件

判決データ

事件番号
平成28ワ25956
事件名
特許権侵害損害賠償請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2018年12月27日
裁判官
柴田義明佐藤雅浩大下良仁

AI概要

【事案の概要】 本件は、磁気テープカートリッジを販売するソニー株式会社(原告)が、発明の名称を「磁気記録媒体」とする特許権(特許第4370851号)を保有していたところ、富士フイルム株式会社および子会社の富士フイルムメディアマニュファクチャリング株式会社(被告ら)が製造・販売する磁気テープカートリッジ(LTO規格の被告製品1〜6)が同特許権を侵害するとして、民法709条および特許法102条2項に基づき、各被告に対しそれぞれ損害賠償金1億円(内金請求)および遅延損害金の支払を求めた事案である。 本件特許発明は、高密度型の磁気記録媒体について、非磁性支持体上に非磁性層・磁性層・バック層を積層し、磁性層の保磁力Hc〔kA/m〕とSFD(スイッチング・フィールド・ディストリビューション)について「230≦Hc×(1+0.5×SFD)」(式(1))、およびHcと角形比RsとについてHc/Rsが2.2以上2.6以下(式(2))という関係を満たし、全厚12μm以下であることを要件とするものである。技術的意義は、記録電流値の裕度(記録電流設定マージン)と十分な再生出力を得るための最適記録電流を両立させ、良好なオーバーカレント特性を備えた大容量型磁気記録媒体を提供する点にあるとされていた。 被告富士フイルムは本件特許について無効審判を請求し、原告はその審判手続において特許請求の範囲の訂正(Hcを210以上221以下に限定するなど)を請求していた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(特に磁性層が多磁区粒子に限られるか、磁性層の膜厚やヘリカル・スキャン方式に限定されるか、式(1)に上限値が読み込まれるか)、(2)本件特許に新規性欠如・進歩性欠如・サポート要件違反・実施可能要件違反の無効理由が存在するか、(3)訂正の再抗弁により無効理由が解消するか、である。 【判旨】 裁判所は、事案に鑑みまずサポート要件違反(特許法36条6項1号)の成否を検討した。サポート要件の適合性は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明を対比し、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲であるか否かにより判断すべきであるとした一般論を示したうえ、本件明細書には式(1)の技術的意義を直接述べる記載がなく、式(1)が当該技術分野で広く知られている式であるとの証拠もないと認定した。そして、本件明細書の実施例においてHc×(1+0.5×SFD)が課題解決を裏付ける数値範囲は概ね230.1〜245.8(実施例3を含めても247.5)にとどまるところ、式(1)には上限値が定められておらず、これを大きく超える数値域について記録電流値の裕度を確保できることの記載や示唆がないうえ、Hcの上限値やSFDの下限値も規定されていないため、実施例を大きく下回るSFDの値でも式(1)を満たし得る構成が広く含まれるとした。こうした範囲について、当業者が本件明細書の記載および出願時の技術常識から課題を解決できると認識することはできないとして、本件発明はサポート要件に違反すると判断した。 さらに、本件訂正によりHcを210以上221以下に限定したとしても、式(1)の上限値が依然として定まらず、SFDの下限値も規定されない点は変わらないため、実施例から裏付けられる範囲を超える広い構成がなお含まれ、サポート要件違反は解消しないとした。 以上から、本件特許には特許法123条1項4号の無効事由があり、訂正によってもそれは解消しないとして、他の争点を判断するまでもなく、原告は特許法104条の3第1項により本件特許権を行使することができないと結論づけ、原告の請求をいずれも棄却した。本判決は、数式によるパラメータで規定された特許発明について、特許請求の範囲が明細書の実施例が裏付ける範囲を超えて広く及ぶ場合にサポート要件違反が認められることを示した実務上意義のある事例である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。